原子系および分子系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/11 05:23 UTC 版)
量子化学のハートリー–フォック法内では、反対称波動関数は単一のスレイター行列式によって近似される。しかしながら、正確な波動関数は一般に単一の行列式として表現できない。単一行列式近似はクーロン相関を考慮に入れないため、全電子エネルギーはボルン–オッペンハイマー近似内の非相対論的シュレーディンガー方程式の厳密解とは異なる。したがって、ハートリー–フォック限界は常にこの正確なエネルギーよりも上にある(変分原理)。この差が「相関エネルギー」と呼ばれる(ペル=オロフ・レフディン(英語版)による造語)。相関エネルギーの概念はウィグナーによってそれ以前に研究されていた。 上述したように一般的にフェルミ相関と呼ばれる電子相関は既にHF近似内で考慮されており、2つの平行スピン電子は空間中の同じ点に存在できない。一方、クーロン相関はクーロン反発による電子の空間的位置間の相関を記述し、ロンドン分散力といった化学的に重要な効果の原因である。考慮している系全体の対称性あるいは全スピンに関連する相関も存在する。 相関エネルギーという単語は注意して使用されなければならない。まず、これは相関を考慮した手法とハートリー–フォックエネルギーとの差として大抵定義される。しかし、HFには既にある程度の相関が含まれているため、完全な相関エネルギーは存在しない。次に、相関エネルギーは使用される基底関数系に高度に依存する。「正確な」エネルギーは完全な相関と完全な基底関数系を持つエネルギーである。
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