原価計算の目的
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 09:08 UTC 版)
原価計算を初めて学ぶ者は原価計算の目的は「製品の原価を計算することである」と誤解しがちである。確かに原価の計算もするが、それは原価計算の一目的に過ぎない。実際には以下のように多くの目的が存在し、目的が異なれば集計する対象も期間も集計方法も違う。 原価計算の目的 内部の経営管理者に役立つ目的 経営意思決定目的 戦略的・投資意思決定目的 業務的意思決定目的 業績評価目的 利益管理目的 原価管理目的 外部の利害関係者に役立つ目的 財務諸表作成目的 以上のように原価計算には5通りの目的があるが、目的が異なれば使用する原価計算の手法も異なる。 例えば財務諸表作成目的なら、製品ごとに原価を計算する必要がある。一方原価管理目的なら製品別に原価を計算しても全く意味がない。例えば工場の責任者がある製品の今月の原価が先月より100円高くなったと指摘しても、高くなった理由は製品ごとの原価計算ではどこの部門でコストがかさんだかわからない(仕入れの価格が上がったのか? 従業員の人員が上がったのか? 設備投資に費用がかさんだのか?)。この概念は重要であり欧米でもdifferent costs for different purposes(「異なる目的には異なる原価を」)と呼ばれている。 目的によって手法も異なる原価計算目的単位会計期間適切な概念会計技法財務諸表作成目的 製品 1年 製品原価と期間原価 実際総合原価計算 原価管理目的 原価責任センター 毎日、毎週、毎月 管理可能費、管理不能費 標準原価計算 ただし必ずしも目的と手法が1対1の関係にあるわけではない。一つの手法が複数の目的に役立つこともあれば、一つの目的に複数の手法を用いられることもある。 建設業会計関連においては、原価計算の目的は、大きく二つに集約される。①外部の利害関係者に会社の経営成績を開示すること(要素的原価把握)、②内部管理を効果的に実施すること(工事種類別原価把握)である。 要素別原価把握とは、材料費,労務費·外注費·経費の四要素に分類し、集計するものである。建設業者はこの分類で作成した完成工事原価報告書を各事業年度の終了時に、株主、税務署、投資家に開示する。 工事種類別原価把握とは、原価を工事種類ごとに分類し、集計するもので、建設業者は見積積算,予算統制,原価管理などに利用している。
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