単位元類似の概念
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/12/31 08:52 UTC 版)
擬環を扱う文脈において、単位元を持つという条件よりは弱いが同等程度に一般な性質というのがいくつか存在する。例えば、 冪等元を十分豊富に持つ環 擬環 R が「冪等元を十分豊富に持つ」とは、R の冪等元からなる部分集合 E(つまり E の各元 e は e2 = e を満たす)で、E は直交系(つまり E の二元 e, f が e ≠ f ならば ef = 0)かつ R = ⨁ e ∈ E e R = ⨁ e ∈ E R e {\displaystyle R=\bigoplus _{e\in E}eR=\bigoplus _{e\in E}Re} となるようなものが取れることを言う。 局所単位元を持つ環 擬環 R が「局所単位元 (local unit) を持つ」とは、R の如何なる有限集合 r1, r2, …, rt に対しても、e2 = e を満たす R の元 e が存在して、各 i に対して eri = ri = rie となるときに言う。 s-単位的な環 擬環 R が「s-単位的」であるとは、R の任意の有限集合 r1, r2, …, rt ごとに、各 i に対して sri = ri = ris を満たす R の元 s が取れることをいう。 堅固な環 擬環 R が「堅固」(firm) であるとは、r ⊗ s ↦ rs で定まる標準準同型 R ⊗ R R → R {\displaystyle R\otimes _{R}R\to R} が同型となることを言う。 冪等環 擬環 R が「冪等環」(irng) であるとは、R2 = R を満たすことを言う。つまり、R の各元 r に対して r = ∑ i r i s i {\displaystyle r=\sum _{i}r_{i}s_{i}} を満たす R の元 ri, si が取れることをいう。 などを挙げることができる。これらが単位元を持つことよりも弱い性質であることや、後へ行くほどより緩い制約条件となっていることを確かめることは難しくない。 単位的環が十分豊富に冪等元を持つことは E = {1} とすればよい。 冪等元を十分豊富に持つ非単位的環には例えば、有限個の例外を除く全ての成分が 0 であるような体上の無限次行列全体の成す環が挙げられる。主対角成分のただ一つの成分だけが 1 で他は全部 0 であるような行列がこの環の直交冪等系になる。 冪等元を十分豊富に持つ環が局所単位元を持つことは、直交冪等系の有限和が局所単位元の定義を満たすことを見ればよい。 局所単位元を持つ環が s-単位的であること、s-単位的環が堅固であること、堅固な環が冪等環であることはいずれも明らかであろう。
※この「単位元類似の概念」の解説は、「擬環」の解説の一部です。
「単位元類似の概念」を含む「擬環」の記事については、「擬環」の概要を参照ください。
- 単位元類似の概念のページへのリンク