層 (数学)
(前層 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/07 23:45 UTC 版)
数学における層(そう、英: sheaf[注 1], 仏: faisceau)とは、位相空間上で連続的に変化する様々な数学的構造をとらえるための概念であり、大域的なデータを局所的に取り出すこと、および局所的なデータの貼り合わせ可能性によって定式化される。
層は局所と大域をつなぐことばであり、装置である。層のことばを使って多様体やリーマン面などの幾何学的対象が定義できる。曲面の向きや微分形式も層のことばで定義できる。 例として、位相空間上の連続関数を考える。位相空間の各開集合に対しそこで定義された連続関数の環が定まり、開集合の包含関係に対し定義域を制限することで定まる写像は環の射である。 さらに、局所的に定義された連続関数の族が大域的な関数を定義するならば、その関数は連続関数である。層の定義は、この2つの性質を抽象化したものである[1]。
層理論の幅広い概念力と純粋数学を超えた分野への幅広い応用性は、ごく最近になってようやく認識され始めた。応用圏理論の観点から、グラフのn色彩、衛星データ、チェス問題、ベイジアンネットワーク、自己相似群、音楽演奏、複体など、様々な応用例を考察できる。 [2]
より形式的に、大域から局所への移行のみを考える概念は前層(ぜんそう、presheaf)とよばれる[3]。
定義
前層
組
層を特別な種類の関手としても表現できることを思い出そう。このとき、層の射は対応する関手の自然変換である。射のこの概念により、任意の C に対し X 上の C に値を持つ層の圏が存在する。その対象は C に値を持つ層であり、射は層の射である。層の同型射はこの圏における同型射である。
層の同型射は各開集合 U 上の同型射であることを証明できる。言い換えると、φ が同型射であることと、各 U に対し φ(U) が同型射であることが同値である。同じことは単射についても正しいが、全射については正しくない。層係数コホモロジーを参照。
層の射の定義において貼りあわせの公理を用いなかったことに注意しよう。したがって、上の定義は前層に対しても意味をなす。すると C に値を持つ前層の圏は関手圏、O(X) から C への反変関手の圏である。
層の茎
層
前層
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 16:51 UTC 版)
組 ( X , T ) {\displaystyle (X,T)} を X {\displaystyle X} が集合、 T {\displaystyle T} が X {\displaystyle X} の開集合系である位相空間とする。X 上の(集合の)前層 F {\displaystyle {\mathcal {F}}} とは、次の条件を満たす X {\displaystyle X} の開集合から集合への対応規則である。 X {\displaystyle X} の開集合 U ∈ T {\displaystyle U\in T} に対して集合 F ( U ) {\displaystyle {\mathcal {F}}(U)} が定まる。 開集合の包含関係 U ⊂ V {\displaystyle U\subset V} に応じて制限写像(せいげんしゃぞう、restriction map)と呼ばれる写像 ρ U V : F ( V ) → F ( U ) {\displaystyle \rho _{U}^{V}\colon {\mathcal {F}}(V)\to {\mathcal {F}}(U)} (ρ VU を ρU, V のように記すこともある)が定まり、さらに次の条件を満たす。 ρ U U = i d U {\displaystyle \rho _{U}^{U}=\mathrm {id} _{U}} (ここで、 i d U : F ( U ) → F ( U ) {\displaystyle \mathrm {id} _{U}:{\mathcal {F}}(U)\to {\mathcal {F}}(U)} は恒等写像である)。 U ⊂ V ⊂ W ⟹ ρ U W = ρ U V ∘ ρ V W {\displaystyle U\subset V\subset W\implies \rho _{U}^{W}=\rho _{U}^{V}\circ \rho _{V}^{W}} 。 各開集合 U {\displaystyle U} に対応付けられる F ( U ) {\displaystyle {\mathcal {F}}(U)} がどれも加群の構造を持ち、制限写像がどれも加群の準同型となっているならば X 上の加群の前層、同じく F ( U ) {\displaystyle {\mathcal {F}}(U)} がどれも環であって制限写像がどれも環準同型ならば X {\displaystyle X} 上の環の前層、といったように F ( U ) {\displaystyle {\mathcal {F}}(U)} たちのもつ構造によって前層をクラスに分けることができる。 各開集合 U {\displaystyle U} に対して F ( U ) {\displaystyle {\mathcal {F}}(U)} の元を前層 F {\displaystyle {\mathcal {F}}} の U {\displaystyle U} 上の切断(せつだん、section)あるいは断面(だんめん)と呼ぶ。開集合の包含関係 U ⊂ V {\displaystyle U\subset V} と V {\displaystyle V} 上の切断 s ∈ F ( V ) {\displaystyle s\in {\mathcal {F}}(V)} が与えられたとき、 s | U := ρ U V ( s ) {\displaystyle s|_{U}:=\rho _{U}^{V}(s)} と記して、 s | U {\displaystyle s|_{U}} を切断 s {\displaystyle s} の U {\displaystyle U} への制限 (restriction) と呼ぶ。 圏論の言葉で言えば、 X {\displaystyle X} の開集合系(これは包含関係に関する順序集合となる) T {\displaystyle T} を圏と見なすとき、 X {\displaystyle X} 上の前層とは T {\displaystyle T} から集合の圏への反変関手のことであるということができる。また、可換群の(あるいは加群の)前層や環の前層は T {\displaystyle T} から可換群の圏や環の圏への反変関手のことであり、同様にして T {\displaystyle T} から適当な圏 C {\displaystyle {\mathcal {C}}} への反変関手として C {\displaystyle {\mathcal {C}}} に値を持つ前層が定義される。二つの前層を関手と見なして、その間の自然変換となるものを前層の射または前層の準同型とよぶ。
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