初めから空いていた場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/23 04:24 UTC 版)
もう一つの、初めから埋められていなかった場がある場合として考えられるのは、近隣に場を占める生物群が生息していない隔離された島である。実際に適応放散は海洋島においてよく知られている。大陸から海洋島に進出した生物は島に定着して異所的種分化を遂げ、やがて新たに出現した種は別の島にも移入し、複数種が一つの島に生息するようになる。島の環境に適応した特殊化は大陸から島への進出時にも、複数種の共存の下での相互作用の結果としても、すなわち異所的段階でも同所的段階でも生じる。これがこの場合の適応放散である。 最も有名な例は、チャールズ・ダーウィンが進化論の着想を得たと言われるガラパゴス諸島であろう。有名なゾウガメは島ごとに別亜種とされ、最大のイザベラ島には五つの亜種があり、全部で15亜種が知られている。これは異所的な種分化の例であるが、同所的な種分化の例で有名なのがダーウィンフィンチという小鳥の一群で、系統的には極めて近いものが、様々な餌を取り、それに応じて嘴の形が大きく異なっている。最も嘴が太いものは植物の種子を主として食べ、昆虫はほとんど取らない。嘴が細いものは、逆に昆虫を中心として餌を漁る。最もとがった嘴を持つ種は、木の割れ目などから昆虫をつまみ出して食べる。これはキツツキの生態的地位に当たると考えられる。それらは全部で13種に分けられているが、その祖先は多分1種であると考えられている。 しかし、最も派手な適応放散が知られているのはハワイ諸島である。この島では極めて独特な生物相が知られていた。鳥類ではハワイミツスイ科がこの諸島の特産で、40種以上が知られ、それらは嘴やその外見が大きく異なっている。また、昆虫ではハワイトラカミキリ属はハワイ諸島特産で、130種以上が知られている。この祖先は、おそらく北アメリカ南部のトラカミキリの一種だと言われる。また、世界で他に例のない肉食性のシャクトリムシすらも発見されている。ただし、現在では持ち込まれた外来種等の影響により、その多くが損なわれている。昆虫の三分の一が絶滅したとの見積もりもある。
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