刑罰法規の明確性と憲法31条
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 14:14 UTC 版)
「徳島市公安条例事件」の記事における「刑罰法規の明確性と憲法31条」の解説
刑罰法規については、罪刑法定主義の見地から、明確性が要求される。その目的として、裁判規範としての面において、刑罰権の恣意的な発動を避止することを趣旨とするとともに、他方、行為規範としての面において、可罰的行為と不可罰的行為との限界を明示することによつて国民に行動の自由を保障することを目的とする。 本件では、「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによつてこれを決定すべきである。」としているが、同時に徳島市公安条例を限定解釈したうえで、「その行為が秩序正しく平穏に行われる集団行進等に伴う交通秩序の阻害を生ずるにとどまるものか、あるいは殊更な交通秩序の阻害をもたらすようなものであるかを考えること」を前提とした上で通常人が判断できるかどうかを判断している。 このような限定解釈を行ったうえで明確性に欠けることはないという最高裁の判断枠組みについては、萎縮効果の観点から問題視する学説の声も強い(関連判例として、広島市暴走族追放条例事件)。特に表現の自由の保障の観点(前述の行為規範の観点)から、明確性を欠く規制はそれだけで違憲とすべきとの学説もあるし、同判決において高辻裁判官が明確性について多数意見とことなり明確性の要件を満たしているところに疑問を呈している。 なお、最高裁は福岡県青少年条例事件において「淫行」についても、明確性に欠けないと判断するなど、現在まで明確性の要件に欠けるとして違憲判断を下したことはない。
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