刑罰の本質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 07:56 UTC 版)
刑罰については、絶対主義、相対主義、併合主義の3つの立場がある。 絶対主義 刑罰は正義を回復するための道義的必要に基づく応報であり、犯罪を行ったから罰するものであるという立場を絶対主義という。絶対主義は絶対的応報刑論を内容としている(応報刑論を参照)。絶対的応報刑論の論者としてカントやヘーゲルがいる。 相対主義 刑罰の合目的性・有用性から刑罰は犯罪を行わせないために罰するものであるという立場を相対主義という。相対主義は目的刑論を内容としている(目的刑論を参照)。 相対主義には一般予防論と特別予防論がある。 一般予防論とは、刑罰は犯罪者を処罰することにより社会の一般人を威嚇し犯罪が発生することを抑止する目的をもつものであるという立場をいう。一般予防論は中世における不合理で残虐な刑罰を批判し、相対主義によって刑罰の合理化や緩和化を図ろうとしたもので、一般予防論の論者としてベッカリーアやフォイエルバッハがいる。 特別予防論とは、刑罰は犯罪者を処罰することにより犯罪者自身を改善するもので、それによって将来の犯罪を抑止する目的をもつものであるという立場をいう。特別予防論の論者としてリストやフェリーがいる。 併合主義 絶対主義と相対主義の両者を統合し、刑罰には正義の回復と合目的性のいずれも存在し、犯罪を行ったがゆえにかつ犯罪を行わせないために刑罰は存するという立場を併合主義という。 20世紀のヨーロッパ各国での刑法改正作業では応報刑論と目的刑論が対立していたが、応報刑論者も刑罰による犯罪者の改善の必要性を承認するようになったため併合主義が通説化した。
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