冥界神ギルガメシュ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 07:08 UTC 版)
ギルガメシュは死後まもなく神格化され、冥界神として崇められた。しかし高位の神ではなく、人が比較的近寄りやすい「個人神」であったと伝えられている。『ウルナンム王の死と冥界下り』では、「冥界のエンリル神(最高神)」と呼ばれるエレシュキガル女神とネルガル神らと共に神の1人として名を連ねているが、その存在は神というより冥界の王(ルガル)であり、冥界に下った者の指導を行う裁定者であったとも形容される。新アッシリア時代の書版には冥界神ギルガメシュに捧げられた祈祷が鮮明に残されており、その中においても「完全な王」「冥界の集合神アヌンナキの裁き主」として描かれる他、そういった裁きと判決の権能はシャマシュが託したとも記される。これは、正義と法を司る生命守護の神として、夜に冥界を照らし地上を脅かす冥界の悪霊や死人の魂を制御する神性を持つシャマシュと共に、冥界に降りたギルガメシュも災厄をもたらす物事から人間を守ってくれる、と信じられていたことを示している。 古代メソポタミアでは、古バビロニア歴5月に当たるアブの月(現在で言う7~8月)になると死者を供養する祭典「アブ祭」が行われ、それに伴い悪霊やらも活発になってしまう時季には、祭礼に際しギルガメシュの像が用いられた。冥界神ギルガメシュへの祈祷もしばしばアブ月に行われ、悪霊からの守護や悪鬼などによってもたらされた病気快復が願われたとされる。ギルガメシュ像に供物を捧げたり、定期的に造り直して整えることも重要であり、また、ギルガメシュを個人神として崇拝した人も複数人いた事実や、前述のようにウル王朝時代の王が既にギルガメシュを祀っていたことなどからも、ギルガメシュが死後も民間で広く崇拝されていたことが知られる。 すなわち、神格化を意味するイシュタルとの縁結びを拒絶したギルガメシュは、後に冥界神にはなってもイシュタルの夫ドゥムジのように、「死んで復活する神」ではなかった。
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