写像度を用いた証明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/05 08:08 UTC 版)
「ブラウワーの不動点定理」の記事における「写像度を用いた証明」の解説
ブラウワーによる1911年の証明は、連続写像の写像度の概念を利用したものだった。その証明に関する近年の記述は参考文献 に見られる。 K = B ( 0 ) ¯ {\displaystyle K={\overline {B(0)}}} を、原点を中心とする R n {\displaystyle \mathbb {R} ^{n}} 内の閉単位球とする。簡単のため、 f : K → K {\displaystyle f:K\to K} は連続的微分可能とする。ある点 p ∈ B ( 0 ) {\displaystyle p\in B(0)} が f {\displaystyle f} の正則値であるとは、 p {\displaystyle p} の原像のすべての点において f {\displaystyle f} のヤコビアンが非特異であることをいう。特に、逆函数定理より、 f {\displaystyle f} の原像のすべての点は( K {\displaystyle K} の内部である) B ( 0 ) {\displaystyle B(0)} に属する。正則値 p ∈ B ( 0 ) {\displaystyle p\in B(0)} における f {\displaystyle f} の写像度は、 f {\displaystyle f} の下での p {\displaystyle p} の原像についての f {\displaystyle f} のヤコビ行列式の符号の和で定義される。すなわち deg p ( f ) = ∑ x ∈ f − 1 ( p ) sign ( det ( D f ( x ) ) ) {\displaystyle \operatorname {deg} _{p}(f)=\sum _{x\in f^{-1}(p)}\operatorname {sign} \left(\det(Df(x))\right)} である。写像度とは、大雑把にいうと、p のまわりの小さな集合についての原像 f の「シート」の数である。但し、そのシートが逆向きであればマイナスをかけて数えることとする。したがってこれは、回転数の概念の高次元への一般化である。 写像度は次の「ホモトピー不変性」という性質を持つ: f {\displaystyle f} と g {\displaystyle g} を二階連続的微分可能な函数とし、 0 ≤ t ≤ 1 {\displaystyle 0\leq t\leq 1} に対して H t ( x ) = t f + ( 1 − t ) g {\displaystyle H_{t}(x)=tf+(1-t)g} とする。また点 p {\displaystyle p} はすべての t に対して H t {\displaystyle H_{t}} の正則値であるとする。このとき、 deg p f = deg p g {\displaystyle \deg _{p}f=\deg _{p}g} が成り立つ。 K {\displaystyle K} の境界に不動点が存在しないなら、函数 H ( t , x ) = x − t f ( x ) {\displaystyle H(t,x)=x-tf(x)} は g ( x ) = x − f ( x ) {\displaystyle g(x)=x-f(x)} から恒等函数へのホモトピーである。恒等函数はすべての点において写像度 1 となる。特に、原点でも写像度 1 であるため、 g {\displaystyle g} もまた原点で写像度 1 となる。結果として、原像 g − 1 ( 0 ) {\displaystyle g^{-1}(0)} は空とはならない。 g − 1 ( 0 ) {\displaystyle g^{-1}(0)} の元が、すなわち元の関数 f の不動点である。 さらなる一般化のためにはより多くの概念が要求される。写像度の定義は、f の特異値にまで拡張されねばならず、したがって連続函数までの拡張となる。近年のホモロジー論の進展は、写像度の構成を簡略化し、標準的な証明となっている。
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