免疫不全マウスを使ったヒト化マウス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/18 00:53 UTC 版)
「ヒト化マウス」の記事における「免疫不全マウスを使ったヒト化マウス」の解説
疾患の研究や薬剤の開発に当たって、人間を用いる実験は出来ない。一般には動物で実験するが、動物実験の結果が人間に当てはまるとは限らない。その為に動物にヒトの正常細胞や疾患細胞を移植し定着させたヒト化動物が有用となっている。動物でもマウスは成長が早く繁殖力が強く世代交代が早く飼いやすい。従来から実験動物にはマウスが一番たくさん使われているが、ヒト化動物でもマウスが使いやすく、ヒト化マウスの開発が進められ、大きな成果をあげている。 ヒトの細胞が定着したヒト化マウスを作るには重度の免疫不全マウスを用いる。免疫不全マウスは異物の排除能力がなく、ヒトの細胞を植えるとマウスの体内でヒトの細胞や組織が定着する。もちろん免疫不全マウスは完全無菌状態で飼育しないと細菌やウイルスの感染ですぐに死亡する。 ただし、免疫不全マウスといえど初期の免疫不全マウスにはわずかに免疫が残っており、ヒトの細胞の移植は限定的なものであった。1980年から現在に至るまでの免疫不全マウスの改良(免疫不全マウスから、重度の免疫不全マウス、さらに重度の超免疫不全マウス)によって現在ではさまざまなヒトの細胞の移植が容易になっている。 現在では、もっとも進んだ超免疫不全マウスにはNOD/Shi-scid-IL2Rγnullマウス(NOGマウス)やRag2null/IL2Rγnullマウスなどがありこれらの超免疫不全マウスにヒトの造血細胞を移植するとマウスの体内にヒトの造血細胞が定着し、マウスの体内でヒトの血液細胞が生産され定着・循環する。超免疫不全マウスの皮膚にヒトの頭皮を移植するとマウスにヒトの毛髪がはえ、ヒトの子宮内膜細胞を移植したヒト子宮内膜モデルマウスではホルモンの調節投与で月経周期を示せる。同じくヒトのがん細胞や白血病細胞を超免疫不全マウスマウスに定着させることも、あるいはマウスの体内に定着させたヒトの血液細胞にエイズウイルスを感染させてマウスをヒトのエイズモデルにすることも可能である。
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