光のこだま
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/02 16:27 UTC 版)
「いっかくじゅう座V838星」の記事における「光のこだま」の解説
新星や超新星のように、急激に明るくなる天体では、「光のこだま(光エコー)」という現象が起きることが知られている。中心天体から周囲に放射された光は、まず最短経路で観測者へ直接届いて観測される。もし天体の周囲に星間物質の雲が存在すると、放射光は星間物質で散乱や反射を起こすため、より長い経路を通って直接光よりやや遅れて観測者へ届き観測される。このとき、観測者には天体からの直接光の後に天体の周囲に徐々に周囲の散乱光が見えるため、あたかも中心天体からの星間物質が広がっていくように、さらには円環状に拡がっていく構造が光速を超えて拡散運動しているように見えてしまう現象である。しかし実際には物質が光速より速く動くことはありえない。 いっかくじゅう座V838星で観測されたこの現象はハッブル宇宙望遠鏡により詳細に観測・記録されているが、それまで前例がなかった記録であったため、一時、中心天体の星間物質が超光速運動しているとの誤認を生んだ。画像からは、球状の塵の殻が恒星を中心に膨張しているように見えているが、幾何学的にも中心天体から観測者へ向かう光の経路は、これを二つの焦点とする膨張しない楕円体の面上で反射する光のみ等距離(すなわち等時間で光が到達する距離)であり、この楕円体よりも外側の星間物質が徐々に中心星に照らされてゆくのを観測者が観測しているだけである。 なお、中心星を取り巻く雲が、中心星自身とどのような関係にあったかはまだ明らかになっていない。もし関係があるならば、2002年の増光以前に中心星から爆発などで放出されてできたものと考えられ、2002年の増光が単発の崩壊現象によるものであるとする説を否定することになる。一方、いっかくじゅう座V838星系は非常に若く、星が形成された星雲の中に未だに留まっていることを示す証拠があり、照らし出されたのはその名残の前駆母星雲だった可能性もある。 爆発では初め、短い波長の(青い)光が放射されており、ハッブル宇宙望遠鏡の光のこだまの画像でも外側の縁が青みがかっているところに、その痕跡を見ることができる。
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