光から生まれてきたり露の玉
作 者 |
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季 語 |
露 |
季 節 |
秋 |
出 典 |
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前 書 |
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評 言 |
しずかで透明な句だ。 草木の葉に載ったひとつぶの露の玉。これをみて作者は不思議に思った。どこから生まれてきたのだろう。雨が降ったわけでもない。光からだと直感した。そう、万物は光から生まれてきたのだ。私もあなたも。 よいことなのかよくないことなのか、句集を手にしたとき、たいてい私はあとがきから読んでしまう。久保るみ子さんの『さふらんさふらん』もそうだった。 俳句への思い、夫で俳句の師である久保純夫さんへの思いが素直に綴られていた。 闘病中であることも知った。 以前、お目にかかったときはお元気そうに思えた。お元気な時期だから、その集まりに純夫さんといっしょにお出でになったのだ。 「最後に夫、久保純夫へ。私の人生はあなたそのものです。」 「あとがき」の終りのこの一行に涙が出た。夫婦とはこうありたい、結婚して三年目の私はそう思った。 この句集には好きな句がたくさんある。 ふだんの生活を多少違った角度から素直に詠み、句集後半にははっきりとした決意のようなものも感じられる。すこし哀しい。しかし句集全体が愛にあふれている。 久保るみ子さんが亡くなったのは昨年(2011年)句集発行の翌月である。 今年、久保純夫・るみ子夫妻の句集『美しき死を真ん中の刹那あるいは永遠』(現代俳句協会)が発行された。口絵には掲句と純夫さんの「かたちから忘れゆくなり露の玉」の二句が刻まれたるみ子さんのお墓、比翼塚の写真が掲載されている。供えられた「旭松こうや豆腐」の箱が写っていてはっとした。るみ子さんは和歌山県のご出身である。 この句集の純夫さんの「あとがき」も何度読み返しても泣けてしまう。 |
評 者 |
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備 考 |
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