使用済みマグネシウムの再生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 00:38 UTC 版)
「空気マグネシウム電池」の記事における「使用済みマグネシウムの再生」の解説
石炭を燃やしてマグネシウムを製造するピジョン法、海水を電気分解する方法など、環境に優しくない再生法から脱却する方法として、太陽光、風力、地熱などの自然エネルギーとレーザーを組み合わせた、現在実用化に最も近いとされるマグネシウム循環社会は矢部東工大教授によって2006年、世界で初めて提案された。このことが評価されて、矢部は米国タイム誌で、2009年環境のヒーローとして選ばれた。 このようなシステムはマグネシウム文明、マグネシウム循環社会として書籍としてまとめられている。 電池の放電によって生成される水酸化マグネシウムは安定した物質であるため金属マグネシウムにリサイクルすることは容易ではない。触媒とともに真空中で約2200℃に加熱することにより還元できるため、小濱は太陽炉によるマグネシウムリサイクルを提案している。 このような太陽熱によるマグネシウムの再生は、ピジョン法に代わるマグネシウムの生産方法として、昔から研究されてきており、すでに1995年にMurrayらは太陽熱と炭素還元剤を使用した実験を行っている。彼らは2234度の高温を30分間持続させて、マグネシウムの再生に成功しているが、生成マグネシウムの割合はわずか9%であった。このように、太陽だけを利用する場合には、あまりにもマグネシウム生産量が少なく、実用には無理であるとの試算もあり、実用化に至っていない。大量に発生するマグネシウム蒸気の、光を導入する窓への付着や、炭素還元剤を使用した場合に発生する二酸化炭素等々の問題により、単純な太陽炉でのエネルギー循環は、まだ未解決の部分が多い。 これに対して、東京工業大学の矢部孝らは、太陽光から生成されたレーザーや、自然エネルギーから得られる可能性のある半導体レーザーを用いたマグネシウム再生を提案しており、従来のピジョン法の約4倍の効率を実験により実現している。 ここで、このような巨大なエネルギーがどうして必要なのかを示す。1gの酸化マグネシウムを4000度にするために必要なエネルギーは4kJだ。これに対し、ピジョン法では、1gのマグネシウムを作るために10gのコークスを使っている。この熱量は300kJである。逆に、1gのマグネシウムが発するエネルギーは25kJなので、このエネルギーを与えないとマグネシウムができないことも当然である。これからも、ピジョン法がいかにエネルギー効率が悪いかわかるだろう。もっと大事なことは、マグネシウムを再生するためのエネルギーは酸化マグネシウムを4000度にする4kJよりもはるかに巨大なエネルギーが必要なことである。これは、酸化マグネシウムをマグネシウムに分解するエネルギー、マグネシウムを蒸発するエネルギーが余分に必要だからである。だから、4000度に加熱した後も、その5倍以上のエネルギーを与えないとマグネシウムが生成できないのである。
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