作風・俳論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/07 02:07 UTC 版)
子を殴(う)ちしながき一瞬天の蝉 鳥わたるこきこきこきと罐切れば へろへろとワンタンすするクリスマス 三月やモナリザを売る石畳 終戦日妻子入れむと風呂洗ふ などが代表句であり、善人性と庶民的ヒューマニズムが作風の基調をなす。その根底には、貧しい一家を支える母を助けながら多感な少年期を過ごした経験がある。山本健吉は「現実的な人間生活に切り込もうとする意欲は、彼の初期からの特徴をなしている。彼の句は素材的で健康で感傷的で単純で重厚だが、詩人的感性は鋭くも深くもないし、抽象的思考は彼のもっとも不得手とするところだ。私は彼の句に、困苦に耐え、しかもちっともねじけなかった暖かい庶民的な感情が流れているゆえに愛するのである」と評している。 戦時下の投獄経験は俳人としての大きな転機をなし、戦後、獄中で紙石盤に書き付けておいた若干の句を含めて獄中吟の連作として発表した。当時獄中吟をまとめた俳人は不死男のみで、俳壇に大きな感銘を与えることとなった。初期から評論においても活躍したが、戦後は1954年に『俳句』誌に発表した「俳句と『もの説』」において、スローガン的な社会性俳句に疑問を投げかけつつ、俳句という形式は「事」ではなく「もの」に執着しなければ崩れてしまうと論じ「俳句もの説」として注目を集める。晩年は飄逸味のあるのびやかな境涯詠を詠んだ。
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