体の賦値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 05:41 UTC 版)
詳細は「賦値」および「絶対賦値(英語版)」を参照 有理数体上の p-進絶対値など、体の賦値も絶対値の一般化である。賦値には加法賦値と乗法賦値があり、乗法賦値(特に指数賦値)のことをしばしば絶対値あるいはモジュラスと呼称する。賦値体はその賦値の定める距離位相に関して位相体を成す。 複素数体 ℂ の部分体がアルキメデス的な乗法賦値を持つならば、それは本項で述べたような通常の絶対値に(同値の差を除いて)一致する。代数体上のアルキメデス的な乗法付値 | x | v {\displaystyle |x|_{v}} は、ℂ への埋め込み σ をうまくとれば、 | σ ( x ) | {\displaystyle |\sigma (x)|} (ここで | ⋅ | {\displaystyle |\cdot |} は通常の絶対値)と同値となる。一方、代数体上の非アルキメデス的な乗法付値は、有理数体上のp進付値に(同値の差を除いて)一致する。代数体上の乗法付値の同値類のうち、有理数体上で通常の絶対値あるいは正規p進付値と一致するものを標準的な絶対値 (standard absolute value)という。 v が代数体 K 上の標準的な絶対値であるとき、この絶対値による K の完備化を K v {\displaystyle K_{v}} とあらわす。また、この絶対値を有理数体上に制限したものによる、有理数体の完備化を Q v {\displaystyle \mathbb {Q} _{v}} とあらわす。このとき K v {\displaystyle K_{v}} は Q v {\displaystyle \mathbb {Q} _{v}} の拡大体となっており、その拡大次数 n v = [ K v : Q v ] {\displaystyle n_{v}=[K_{v}:\mathbb {Q} _{v}]} を v の局所次数 (local degree) と呼ぶ。このとき、 ‖ x ‖ v = | x | v n v {\displaystyle \lVert x\rVert _{v}=|x|_{v}^{n_{v}}} を正規化された絶対値 (normalized absolute value) という。 v がアルキメデス的な絶対値であれば、 K の埋め込み σ をうまくとり、 ‖ x ‖ v = | σ ( x ) | n v {\displaystyle \lVert x\rVert _{v}=|\sigma (x)|^{n_{v}}} とあらわせる。また、このとき σ が実埋め込みならば n v = 1 {\displaystyle n_{v}=1} で、複素埋め込みならば n v = 2 {\displaystyle n_{v}=2} が成り立つ。v が非アルキメデス的な絶対値で、 v の有理数体への制限が p-進付値に一致しているとき、 p の上にある K 上の素イデアル π をうまくとれば、 ‖ ⋅ ‖ v {\displaystyle \lVert \cdot \rVert _{v}} は正規 π-進付値に一致する。すなわち ‖ x ‖ v = | x | π {\displaystyle \lVert x\rVert _{v}=|x|_{\pi }} が成り立つ(この正規化された絶対値 ‖ ⋅ ‖ v {\displaystyle \lVert \cdot \rVert _{v}} を | ⋅ | v {\displaystyle |\cdot |_{v}} と書いている文献も存在する。)。 v がすべての標準的な絶対値を走るとき、 積公式 ∏ v ‖ x ‖ v = ∏ v | x | v n v = 1 {\displaystyle \prod _{v}\lVert x\rVert _{v}=\prod _{v}|x|_{v}^{n_{v}}=1} が成り立つ。 非アルキメデス的な乗法付値は一階の加法的な賦値と対応がとれ、これらはしばしば同一のものとして扱われる。加法的賦値体あるいは順序体においてその賦値環は、その体における正の数全体の集合を本質的に特徴付けるものである。有限体 Fq (q = pf) において標準的な賦値(モジュラス)は p-進絶対値の冪 | x | q := q − v p ( x ) = | x | p f {\displaystyle |x|_{q}:=q^{-v_{p}(x)}=|x|_{p}^{f}} である。これを適当なハール測度による立方体の体積と理解することもある。
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