会計検査院との比較
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 18:33 UTC 版)
会計検査院は内閣から完全に独立した地位を認められている「憲法機関」であり、合議制の機関ではあるが内閣を頂点とする一般行政部門には属さず、従って組織法学上の行政委員会の範疇には含まれない。会計検査院は、内閣本体・国会(衆参の各議院およびその機関だけでなく、裁判官弾劾裁判所や裁判官訴追委員会など両院が共同して設置する機関も含まれる)・最高裁判所といった国家の根幹をなす機関に対しても「会計検査」という公権力を行使しうる非常に特殊な行政機関であるがゆえに憲法機関となっている。帝国憲法下においても会計検査院は憲法機関であるとともに(第72条)天皇に直隷する「特立ノ地位」を有する機関としての位置づけをされ、院長は親任官であるなど、従前から特別な地位と権能を有していた。 行政委員会制度は、政治の影響力を最小限に抑える必要性が認められるような行政権の行使が求められる場合において、それを担うにふさわしい形態の行政機関を設けるための組織法理論であることから、会計検査院の内閣からの強固の独立性は、そのような場合に、主管行政庁がその付与された権限を内閣の影響を受けずに行使することを保障しうべき制度を考える場合の最良の手本となると思われる。 その一方で、会計検査院のように日本国憲法典に直接規定を持つ機関であれば格別、そのような規定を憲法上に持たない場合にまで法律で内閣の所管から外し得ると考えるならば、憲法によって内閣に直接付与された権限を国会の判断によっていかようにでも制限ないしは剥奪する余地が生じ、違憲性の問題を回避し得ない。そのため、内閣等の所轄下にありながらも相当程度に強固な独立性を持たせた「人事院」等の行政委員会制度は、会計検査院を理想モデルにしつつ憲法73条との抵触を避けた、組織法学的な「力作」ともいえよう。 ただし、行政委員会の制度は憲法上内閣が有する行政権のうちの特定の内容について、それを分掌する合議制の機関を創設することが望ましいと考えられる場合にそれを可能とするための法理論であるにとどまることから、個々の行政委員会の廃止・審議会化・権限の縮小などは、会計検査院の場合(廃止には憲法改正が不可欠であり、名称の変更や権限の縮小についても憲法改正を必要とする場合がある)とは異なり、国会の政治的裁量権が格段に広く働くことには注意が必要である。
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