付加的構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/04 16:45 UTC 版)
定義されたテンソル積はアーベル群であるが一般にはただちに R-加群の構造をもたない。しかしながら、M が (S, R)-両側加群であれば、M⊗RN は明らかな演算 s(m⊗n) = (sm)⊗n を使って左 S-加群にすることができる。同様に、N が (R,T)-両側加群であれば、M⊗RN は演算 (m⊗n)t = m⊗(nt) によって右 T-加群である。M と N がそれぞれ上の両側加群の構造をもっていれば、M⊗RN は (S, T)-両側加群である。R が可換環の場合にはすべての加群は (R, R)-両側加群と考えることができるので、M⊗RN は上述のように R-加群にすることができる。可換環 R 上のテンソル積の構造において、積演算はちょうど記述されたようにア・ポステリオリに定義することもできるし、はじめから自由 R-加群の商を一般の構成に対して上で与えられた元に元 r (m ⊗ n) − m ⊗ (r·n) あるいは同じことだが元 (m·r) ⊗ n − r (m ⊗ n) を追加したもので生成された部分加群によってつくることによってもできる。 {mi}i∈I と {nj}j∈J がそれぞれ M と N の生成集合であれば、{mi⊗nj}i∈I,j∈J は M⊗N の生成集合になる。テンソル関手 M⊗R- は右完全であるが左完全でないこともあるから、これはもとの生成集合が極小であったとしても極小生成集合でないかもしれない。M が平坦加群であれば、関手 M ⊗ R − {\displaystyle M\otimes _{R}-} はまさに平坦加群の定義によって完全である。テンソル積が体 F 上とられれば、上記ベクトル空間の場合である。すべての F 加群は平坦だから、双関手(英語版) − ⊗ R − {\displaystyle -\otimes _{R}-} は両方の位置で完全であり、2 つの与えられた生成集合は基底であり、 { m i ⊗ n j ∣ i ∈ I , j ∈ J } {\displaystyle \{m_{i}\otimes n_{j}\mid i\in I,j\in J\}} は確かに M ⊗F N の基底をなす。 S と T が可換 R-代数であれば、S ⊗R T も可換 R-代数になる。積写像は (m1 ⊗ m2) (n1 ⊗ n2) = (m1n1 ⊗ m2n2) によって定義され線型性によって拡張される。この設定において、テンソル積は R-代数の圏においてファイバー余積(英語版)になる。任意の環は Z-代数なので、つねに M ⊗Z N をとれることに注意しよう。 S1MR が S1-R-両側加群であれば、テンソル写像 ⊗:M×N→M⊗RN と協調的な M⊗N 上一意的な左 S1-加群構造が存在する。同様に、RNS2 が R-S2-両側加群であれば、テンソル写像と協調的な M⊗RN 上の唯一の右 S2-加群構造が存在する[要出典]。 M と N がともに可換環上の R-加群であれば、それらのテンソル積は再び R-加群である。R が環であれば、RM は左 R-加群であり、R の任意の 2 つの元 r と s の交換子 rs − sr は M の零化イデアルに入り、M を右 R 加群に mr = rm. とおくことでできる。R の M への作用は商可換環の作用を通して分解する。この場合 M の自分自身との R 上のテンソル積は再び R-加群である。これは可換代数において非常に一般的なテクニックである。
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