上半身の発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 05:37 UTC 版)
ロボットの研究が進み、アクチュエータや構造材が進歩しても、人間のような歩行を行うロボットはなかなか実現しなかった。人間の歩行の研究やロボットの歩行実験が繰り返されていくうちに、上半身の作用が極めて重要であることが再認識されてきた。 当時の歩行ロボットは人間の腰から下を模倣したものがほとんどで上半身は省略されていた。上半身の重要性はZMP理論の提唱者であるブコブラトビッチ(Miomir Vukobratović)の時代から指摘されていたが、当時のモーターや減速機は貧弱だったので脚機構以外の部分が極力省略されることが多かった。 パターン歩行にしてもZMPにしても位置制御が基本となるので、足首にもアクチュエータが必要になる。そのため末端重量が大きくなり、各関節のアクチュエータは強力で大きなものにならざるを得ない。構造材も当然重くなる。腰から下だけのロボットが片足を持ち上げると、それだけでロボットの質量の半分以上が動くことになる。したがって歩行時の重心の位置変化が激しく、安定領域の狭い制御の難しい制御系になっていた。ブルブルと振動を起こして転倒するロボットが大半だった。 また、末端重量が大きいので、遊脚を振り上げたときの反動が無視できなかった。遊脚を持ち上げてから蹴り下げ始める時に、スキーで言う抜重のような状態になり、軸足の床面との摩擦が少なくなる。摩擦が少なくなると軸足が滑り易くなる。パターン歩行にしてもZMPにしても軸足が動くというのは想定外であるし、想定したとしても検出できるセンサーがない。軸足が少しでも滑るとあっという間に転倒してしまった。重たい脚を動かすには、上半身の動作で常に動的バランスを補償する必要があった。 なお、アクチュエータの性能が良くなった現代では、上半身が無くても歩行は実現できる。
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