ロスのパラドックス
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ロスのパラドックスとは、「手紙を投函すべきである」という命題から、「手紙を投函するかもしくはそれを焼却するかすべきである」という命題が導けてしまうというパラドックスである。これら二つの命題を標準義務論理によって表現すると、それぞれ次のようになる。 O m {\displaystyle Om} O ( m ∨ b ) {\displaystyle O(m\lor b)} ここで、 m → ( m ∨ b ) {\displaystyle m\to (m\lor b)} は古典論理の定理であるから、 O m → O ( m ∨ b ) {\displaystyle Om\to O(m\lor b)} は標準義務論理の定理である。したがって O m {\displaystyle Om} は O ( m ∨ b ) {\displaystyle O(m\lor b)} を含意することが分かる。これは、手紙を投函する義務から、手紙を焼却することによっても達成しうる義務が生ずることになることを意味しており、直観に反する。
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ロスのパラドックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/04 21:05 UTC 版)
アルフ・ロスは、命令的推論のあらゆる説明に対する潜在的な問題が存在することに気づいた。古典論理は次の推論を妥当とする。 P1. 部屋は片付いている。(The room is clean.) C1. ゆえに、部屋は片付いているかまたは草は緑であるかだ。(Therefore, the room is clean or grass is green.) この推論は選言導入と呼ばれる。しかし、同様の推論は命令文にとって妥当ではないように思われる。次を考えよ。 P1. 部屋を片付けよ。(Clean your room!) C1. ゆえに、部屋を片付けよ、さもなくば家を焼き払え。(Therefore, clean your room or burn the house down!) ロスのパラドックスは、妥当性の標準的説明に修正や追加を加えようとする人が直面する課題を浮き彫りにしている。その課題は、妥当な命令的推論とは何を意味するのか、である。妥当な平叙的推論では、前提は結論を信じる理由を与えてくれる。だとすると命令的推論では、前提は結論の言うとおりに行為する理由を与えてくれるのだ、と考える者がいるかもしれない。ロスのパラドックスはこの考えが誤りであることを示唆しているように見えるが、その深刻さの度合いについては多くの議論の主題となっている。
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