ホスフィンオキシド
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/11 06:29 UTC 版)
ホスフィンオキシド (英: phosphine oxide) は、化学式が Cl3P=O で表される塩化ホスホリルのような無機リン化合物や、POR3(R = アルキル基、アリール基)で表される有機リン化合物である。有機ホスフィンオキシドはもっとも安定な有機リン化合物であると考えられ、トリフェニルホスフィンオキシドやトリメチルホスフィンオキシドは450 °C以上でのみ分解する[1]。
結合
ホスフィンオキシドのリンと酸素の「二重結合」の性質には、長い間論争があった。5価のリンはオクテット則を満たさないが、五フッ化リンやリン酸のように、リンがいずれにしろこれを満たさないことは知られている。現在アミンオキシドを表すのに使われているように、以前は P=O 結合は配位結合として表されてきた。この結合へのリンのd軌道の関与は計算化学によって否定されている。他の理論はイオン結合による解釈 X3P+-O- を支持し、これは P=O 結合の結合長の短さを説明する。分子軌道法では、短い結合長は酸素の孤立電子対が X-P 反結合性軌道 σ* に供与されていることに起因するとした。この非経験的 (ab initio) 計算で支持されている提案は、化学界で意見の一致を得ている[2][3]。
合成
ホスフィンオキシドの大部分は、ウィッティヒ反応の副産物として得られる。
もう一つの一般的な合成ルートは、水酸化ホスホニウムの熱分解である。実験室では、しばしば偶然に3価ホスフィンの酸化によって発生する。
利用
ホスフィンオキシドはウィッティヒ反応の副産物として得られる。類似の反応でこれら自身を使うことができる。メトキシメチル(ジフェニル)ホスフィンオキシドを使って、2段階でベンズアルデヒドをβ-メトキシスチレンに変換する。第1段階で、ホスフィンオキシドはTHFまたはジエチルエーテル中のリチウムジイソプロピルアミドによって−90 °Cで脱プロトン化され、それからアルデヒドを加える。後処理した後、付加体が遊離する。カリウム tert-ブトキシドによって、付加体は室温でスチレンに変化する。付加物は光学異性体やメソ体の混合物として存在し、最終的なスチレンは純粋なE体またはZ体として得られる[4]。
出典
- ^ D. E. C. Corbridge "Phosphorus: An Outline of its Chemistry, Biochemistry, and Technology" 5th Edition Elsevier: Amsterdam 1995. ISBN 0-444-89307-5.
- ^ Chesnut, D. B.; Savin, A. (1999). “The Electron Localization Function (ELF) Description of the PO Bond in Phosphine Oxide”. J. Am. Chem. Soc. 121 (10): 2335–2336. doi:10.1021/ja984314m.
- ^ G. L. Miessler and D. A. Tarr “Inorganic Chemistry” 3rd Ed, Pearson/Prentice Hall publisher, ISBN 0-13-035471-6.
- ^ T.A.M. van Schaik et al., published in 1982 or 1983 in the "recueil des travaux chimique des Pays Bas" (own work)
ホスフィンオキシド
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「有機リン化合物」の記事における「ホスフィンオキシド」の解説
詳細は「ホスフィンオキシド」を参照 ホスフィンオキシド (δ3λ3) は R3P=O で表され、酸化数は −1 である。水素結合により多くは親水性である。P=O 結合はかなり分極しており、例えばトリフェニルホスフィンオキシドの双極子モーメントは 4.51 D である。 リンと酸素の結合は古くから議論の的だった。5価のリンはオクテット則に反しており、昔はアミンオキシドと同じく R3P→O のように配位結合として記述された。酸素の電子対からリンの(窒素には無い)空のd軌道への逆供与による完全な二重結合という説もあったが、P=O 結合は C=C 結合と違って付加反応をしないことを説明できなかった。いまでは計算化学の発達によりイオン性の単結合 P+−O− にかなり近いことがわかっている。結合距離がふつうの単結合より短く強いのはイオン間のクーロン力による。硫酸、リン酸および過塩素酸の結合も強く分極した単結合である。
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