ベレムナイトの殻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 03:20 UTC 版)
ベレムナイトの殻は生存時には外套膜に覆われ、実際には内骨格として機能していた。殻は鞘 (rostram)、房錘 (phragmocone)、前甲 (pro-ostracum) の3部分よりなる。鞘は体の末端部にあり、緻密な石灰質の塊であるため化石として残りやすい。房錘は内臓が入った外套腔のすぐ外側にあり、中空の円錐形をした構造である。現生のオウムガイと同様に、ベレムナイトは房錘の空洞内のガスと体液の比を調整することで浮力を得ていたらしい。前甲は背中側にうすく延びた構造で、現生のコウイカの殻と同様に軟体部を支えていた。 生時のベレムナイトが軟体部の後端にある房錘で浮力を生じると、軟体部は水より比重が大きいので頭が下を向いてしまう。しかし、さらに後ろにある鞘は中まで緻密に詰まった石灰質の硬い塊であるために比重が大きく、ここで浮力を相殺してバランスをとることができる。つまり遊泳時のベレムナイトには、房錘で上向きの、軟体部と鞘で下向きの力が働き、一種の天秤のような機構が姿勢の水平を保っていたと考えられている。 ベレムナイトの殻は方解石からなり、一般に化石としての保存状態が良い。殻の鞘の部分の断面には、放射状に伸びる方解石の結晶と同心円状の成長線が観察される。また殻は化学分析の試料に適しており、試料中の同位体比から生存時の古水温を復元する用途にもよく用いられる。アメリカ・サウスカロライナ州の Pee Dee 層から産出するベレムナイトは PDB(Pee Dee Belemnite)と呼ばれ、炭素同位体比(13Cと12Cの割合)の標準物質として利用されている。
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