フォーマリズムと抽象絵画への道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 06:30 UTC 版)
「クロード・モネ」の記事における「フォーマリズムと抽象絵画への道」の解説
ルネサンス美術以来の伝統的な西洋絵画が、3次元空間における主題や物語を画面上に構築しようとしてきたのに対し、マネや印象派の絵画作品では、2次元の画面における色彩や筆触といった造形的な要素それ自体が、描かれた対象を差し置いて自律的・表現的な役割を持ち始めた。この傾向はフォーマリズム(形式主義)あるいはモダニズムと呼ばれる。モネの印象主義の作品においては、無造作に置かれたように見える筆触が、光の反射や水のゆらめきを生き生きと伝えるという表現性を獲得している。 さらにモネは、連作の時代においては、前述のように形態を放棄し、光の観察の追求に向かっており、色彩の自律性・表現性は深化している。逆に言えば、写実主義の限界を露呈するものであった。このようなフォーマリズムを推し進めていった帰結として、ワシリー・カンディンスキーらの生み出した抽象絵画をとらえることができる。1895年にモスクワでモネの『積みわら』を見たカンディンスキーはこれに衝撃を受け、「描く行為は、目覚ましい力と素晴らしさを持ったものと思われるようになる一方で、無意識のうちに、絵画にとって対象が不可欠な要素であるとは信じられなくなったのだった」と語っている。ジャクソン・ポロックら抽象表現主義の画家たちもモネの晩年の作品を高く評価したが、それはフォーマリズムの立場に立ったものであった。
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