ナショナル・ギャラリーの『岩窟の聖母』
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「岩窟の聖母」の記事における「ナショナル・ギャラリーの『岩窟の聖母』」の解説
現在のロンドン・ヴァージョンと考えられている無原罪の御宿り礼拝堂の『岩窟の聖母』は、ペストの罹患を防ぐとして1524年と1576年に信仰の対象になったことがある。しかしながら無原罪の御宿り礼拝堂が取り壊されることとなり、1576年に『岩窟の聖母』も礼拝堂から運び出された。その後1785年ごろに、スコットランド人画家で画商でもあったギャヴィン・ハミルトンが、無原罪の御宿り信心会を前身とする宗教的互助会の管財人カウント・チコーナから『岩窟の聖母』を購入した。ハミルトンが1798年に死去すると、ハミルトンの遺産相続人たちが『岩窟の聖母』をランズダウン卿へ売却した。そして1880年に、ロンドンのナショナル・ギャラリーが当時の『岩窟の聖母』の所有者だったサフォーク伯から9,000ギニーで購入した。当時の保存状態は極めて悪く、レオナルドの作品とする研究者もいれば、ベルナルディーノ・ルイーニの作品とする研究者もいた。 2005年6月にナショナル・ギャラリーは『岩窟の聖母』を赤外線リフレクトグラムで調査し、現在の構成とは異なる下絵を発見した。下絵には右手で左胸をおさえている、おそらくひざまずいている姿勢の女性が描かれていた。この下絵から、当初のレオナルドは「幼児キリストへの礼拝」を主題として描こうとしていたと考える研究者もいる。そのほかにもX線や赤外線による解析の結果、現在の『岩窟の聖母』と下絵にはさまざまな相違点、修正箇所が見つかっている。 2009年と2010年にナショナル・ギャラリーは『岩窟の聖母』に洗浄と保存作業を実施した。ナショナル・ギャラリーは、『岩窟の聖母』の大部分、おそらくは全てがレオナルドによって描かれたもので、一部未完となっている作品であることがこの作業で判明したという予備声明を発表している。そして2010年末にナショナル・ギャラリーからレオナルドの真作であるという公式発表が出された。
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