トッド種数とは? わかりやすく解説

トッド類

(トッド種数 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/20 14:30 UTC 版)

トッド類(トッドるい、英:Todd class)とは、数学の中で特性類代数的位相幾何学における理論の一部と考えられる特定の構造体である。ベクトル束のトッド類 はチャーン類理論によって定義することができ、チャーン類が存在するところで出現する。中でも微分位相幾何学における複素多様体理論と代数幾何学理論で最も顕著である。大雑把に言うと、トッド類 はチャーン類の逆数のように振る舞い、コノーマル束(conormal bundle)[注釈 1]がノーマル束(normal bundle)になる際にチャーン類との関連が起こる。

トッド類 は、古典的なリーマン・ロッホの定理を、より高次元のヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理グロタンディーク・ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理英語版へと一般化する際に基本的な役割を務める。

歴史

チャーン類が定義される前の1937年に、代数幾何学における特殊なケースの概念を紹介した、J. A. トッド英語版からこの名前が付けられた。トッド類に関わる幾何学的な概念は、たまにトッド・エーガー類(Todd-Eger class)とも呼ばれる。 高次元における一般的な定義は、フリードリッヒ・ヒルツェブルフによるものである。

定義

トッド類 を定義するためには、ここでEは位相空間X上の複素ベクトル束であるが、特性類理論の一般的な手法であるチャーン根(別名を、分裂原理英語版)を使うことによって、通常は直線束ホイットニー和英語版の場合にその定義を限定することができる。定義は以下、

内の の係数が1という性質を持つ形式的冪級数(formal power series)であり、ここでi番目のベルヌーイ数を表す。総乗内のの係数を考えると

任意のに対して。これは内で対称、かつ重み j [注釈 2]が均質である。そこで、基本対称式 'p'における多項式 として表すことができる。その後に、トッド多項式(Todd polynomials)と定義する。それらは、特性類の冪級数としてQ を持つ乗法列英語版(Multiplicative sequence)を形成する。

仮にEがチャーン根としてαiを持つ場合、トッド類

これは"X"のコホモロジー環 (または、無限次元多様体を考慮したい場合はその完成時に[注釈 3])で計算される。

トッド類 はチャーン類の形式的冪級数として、次のように明示的に与えられる。

td(E) = 1 + c1/2 + (c12+c2)/12 + c1c2/24 + (−c14 + 4c12c2 + c1c3 + 3c22c4)/720 + ...

ここでのコホモロジー類ciEのチャーン類であり、コホモロジー群H2i(X)内に存在する。もしもX が有限次元の場合は、ほとんどの項が消えて td(E) がチャーン類の多項式となる。

性質

トッド類は乗法的性質(Multiplicative)を持つ。

さて超平面区間の基本類とする。 乗法的性質と 接束に対するオイラー系列英語版(Euler exact sequence)から

これが得られる[3]

ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理

詳細は、ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理を参照。

ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理は、コンパクト[要曖昧さ回避]な複素多様体X上の任意の正則ベクトル束Eに対して、層係数コホモロジー内にあるEの正則オイラー標数、すなわち複素ベクトル空間としての次元の交代和を計算するために適用する。

この定理は、E のチャーン類と X のトッド類(正しくはX の接ベクトル束のトッド類)からオイラー数 χ(X, E) が導かれることを示している。E のチャーン指標を ch(E) とおき、X のトッド類を td(X) とすると、定理は 以下のように書ける。

ここでのtd(X)が、Xの接ベクトル束のトッド類である。

上の公式は、トッド類がある意味で特性類の逆数であるという曖昧な概念を、正確に表したものとなっている。

注釈

  1. ^ コノーマル束は、ノーマル束への二重束として定義される(英語版en:normal bundle#Definitionより)。なお、ノーマル束とは可微分多様体の埋め込みに対しての法束(法線ベクトルの束)を指す[1]
  2. ^ 位相空間を扱う上では、開基底が取りうる最小の濃度を、その位相空間の荷重または重み (weight) と呼ぶ。 基底 (位相空間論) を参照のこと。
  3. ^ 有限次元多様体は次元だけを考えればよいが、無限次元では同じ可算次元のものでも様々な位相ベクトル空間があるため[2]

脚注

  1. ^ 可微分多様体」信州大学 玉木研究室HP、2011年9月11日。2018年9月24日閲覧。
  2. ^ 無限次元多様体の幾何学とトポロジー 」信州大学 玉木研究室HP、2011年1月6日。2018年9月24日閲覧。
  3. ^ Intersection Theory Class 18, by Ravi Vakil

参考文献

関連項目


トッド種数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/29 03:31 UTC 版)

乗法列の種数」の記事における「トッド種数」の解説

トッド種数(Todd genus)は、形式的べき級数 z 1 − exp ⁡ ( − z ) = 1 + 1 2 z + ∑ i = 1 ∞ ( − 1 ) i + 1 B 2 i ( 2 i ) ! z 2 i {\displaystyle {\frac {z}{1-\exp(-z)}}=1+{\frac {1}{2}}z+\sum _{i=1}^{\infty }(-1)^{i+1}{\frac {B_{2i}}{(2i)!}}z^{2i}} の種数であり、上に示したように B2k はベルヌーイ数である。最初いくつかの値を示すと T d 0 = 1 {\displaystyle Td_{0}=1} T d 1 = c 1 / 2 {\displaystyle Td_{1}=c_{1}/2} T d 2 = ( c 2 + c 1 2 ) / 12 {\displaystyle Td_{2}=(c_{2}+c_{1}^{2})/12} T d 3 = ( c 1 c 2 ) / 24 {\displaystyle Td_{3}=(c_{1}c_{2})/24} T d 4 = ( − c 1 4 + 4 c 2 c 1 2 + 3 c 2 2 + c 3 c 1 − c 4 ) / 720 {\displaystyle Td_{4}=(-c_{1}^{4}+4c_{2}c_{1}^{2}+3c_{2}^{2}+c_{3}c_{1}-c_{4})/720} となる。トッド種数は、すべての複素射影空間に対して数値 1 を対応させる(つまり、 T d n ( C P n ) = 1 {\displaystyle \mathrm {Td} _{n}(\mathbb {CP} ^{n})=1} )という性質持っていて、このことは、複素射影空間算術種数が値 1 でもあるように、トッド種数は代数多様体算術種数の値が 1 に一致していることを示すに充分である。この見方は、ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理結果であり、実際、この定理により定式化された重要な発展一つである。

※この「トッド種数」の解説は、「乗法列の種数」の解説の一部です。
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