ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/24 01:54 UTC 版)
Jump to navigation Jump to searchヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理(Hirzebruch–Riemann–Roch theorem)とは、1954年にフリードリッヒ・ヒルツェブルフ(Friedrich Hirzebruch)により証明された高次元の複素代数多様体に対するリーマン・ロッホの定理の一般化である。この定理のさらなる一般化としてグロタンディーク・ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理およびアティヤ=シンガーの指数定理がある。
ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理の内容
コンパクトな複素多様体 X 上の任意の正則ベクトルバンドル E に対し、その層係数コホモロジーの次元の交代和
を E のオイラー数とよぶ。ヒルツェブルフの定理は、オイラー数 χ(X, E) を E のチャーン類と X のトッド類(正確には X の接ベクトル束のトッド類)から計算できるという定理である。E のチャーン指標を ch(E) とし、X のトッド類を td(X) とすると、定理は
と書ける。ここで、ch(E)td(X) は X のコホモロジー環における積で、このコホモロジー類と X の基本類とのペアリングを X 上での積分として書き表した。
リーマン・ロッホの定理
X が 1 次元の場合、すなわちリーマン面の場合、ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理から古典的なリーマン・ロッホの定理である。E を X 上の階数 1 のベクトル束(すなわち直線束)とする。E に対応して曲線上の因子 (代数幾何学) D が存在して E = O(D) となる。これのチャーン指標は 1+D となる。またトッド類は 1 + c1(T(X))/2 であり、T(X) が標準束の双対であることから、これは K を標準因子として 1 - K/2 となる。ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理から
となる。
しかし、h0(O(D)) は l(D) に一致し、セール双対性により h1(O(D)) = h0(O(K − D)) = l(K − D) である。さらに、K の次数は g を曲線 X 種数として 2g - 2であるため、古典的なリーマン・ロッホの定理
を得る。
ベクトルバンドル V に対し、チャーン指標は rank(V) + c1(V) であるので、曲線のベクトルバンドルのヴェイユのリーマン・ロッホの定理
を得る。
曲面のリーマン・ロッホの定理
X を曲面とし、D を X 上の因子として直線束 E = O(D) のオイラー数を計算する。E のチャーン指標は ch(E) = 1+ D + D2/2 である。また X のトッド類は td(X) = 1 - K/2 + (K2 + c2(X))/12 となる。ここで K は X の標準因子で c2(X) は X の接束の第2チャーン類をあらわす。このときヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理は、
である。ここで D = 0 とすると、ネターの公式
を得る事ができ、上の式は
と書く事もできる。
参考文献
- Topological Methods in Algebraic Geometry by Friedrich Hirzebruch ISBN 3-540-58663-6
ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/02 21:26 UTC 版)
「トッド類」の記事における「ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理」の解説
詳細は、ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理を参照。 ヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理は、コンパクトな複素多様体X上の任意の正則ベクトル束Eに対して、層係数コホモロジー内にあるEの正則オイラー標数、すなわち複素ベクトル空間としての次元の交代和を計算するために適用する。 χ ( F ) := ∑ i = 0 dim C M ( − 1 ) i dim C H i ( F ) , {\displaystyle \chi (F):=\sum _{i=0}^{{\text{dim}}_{\mathbb {C} }M}(-1)^{i}{\text{dim}}_{\mathbb {C} }H^{i}(F),} この定理は、E のチャーン類と X のトッド類(正しくはX の接ベクトル束のトッド類)からオイラー数 χ(X, E) が導かれることを示している。E のチャーン指標を ch(E) とおき、X のトッド類を td(X) とすると、定理は 以下のように書ける。 χ ( X , E ) = ∫ X ch ( E ) td ( X ) {\displaystyle \chi (X,E)=\int _{X}\operatorname {ch} (E)\operatorname {td} (X)} ここでのtd(X)が、Xの接ベクトル束のトッド類である。 上の公式は、トッド類がある意味で特性類の逆数であるという曖昧な概念を、正確に表したものとなっている。
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