ディディモセラス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/14 17:58 UTC 版)
ディディモセラス | |||||||||||||||||||||
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Didymoceras stevensoni(右)、D. nebrascense(左上)、D. cheyennese(左下)の復元図
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地質時代 | |||||||||||||||||||||
後期白亜紀 | |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Didymoceras Hyatt, 1894 |
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タイプ種 | |||||||||||||||||||||
Didymoceras nebrascense (Meek and Hayden, 1856) |
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シノニム | |||||||||||||||||||||
ディディモセラス(学名:Didymoceras)は、ノストセラス科に属する異常巻きアンモナイトの属[4]。螺環の塔頂部が巻貝のような円錐状に巻き、殻口・住房側がU字型のフック状の構造をなす[4]。螺環の表面には肋が走り、肋の上に2列の突起を伴う[4][5]。
形態
成長初期段階において、緩い螺旋状の巻きまたは直線的な枝状の構造を示す[3]。成長中期段階では螺環は螺旋を描き、螺環同士は密着する場合もあれば接触しない場合もある[3]。ここまでに形成された螺巻は巻貝のものに類似しており[6]、接さない緩い場合の立体螺旋はばねに類似した形状を示す[5]。成長後期段階の螺環は逆向きに巻き[3]、U字型をなす[4][5]。成長初期から中期にかけての塔状構造の高さや、螺旋が右巻きか左巻きかといった特徴は、同種内であっても変異が大きい[6]。
螺環表面には無数の肋が走り、その上にはおそらく不規則に生えた2列の突起が配列する[1]。
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D. nebrascense(タイプ種)
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D. stevensoni
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D. cheyennense
産地
ディデモセラス属はアメリカ合衆国内で化石がよく見られる異常巻アンモナイトであり、同国内の複数の州に化石帯が分布している[3]。Kennedy et al. (2000)によれば、合衆国内には以下のディディモセラス属の化石帯が存在する[3]。また当該地域における別種や別属(バキュリテス)の化石帯においても、本属の化石がよく産出する[3]。
- Didymoceras nebrascense帯
- 分布 - モンタナ州、ワイオミング州、カンザス州、コロラド州、ニューメキシコ州[3]
- Didymoceras stevensoni帯
- 分布 - モンタナ州、ワイオミング州、コロラド州、ニューメキシコ州[3]
- Didymoceras cheyennense帯
- 分布 - モンタナ州、コロラド州、ニューメキシコ州[3]
本属の化石はテキサス州のBergstrom層、アーカンソー州のOzan FormationとAnnona Chalk、デラウェア州のMount Laurel Sand、ニュージャージー州のWenonah層でも産出している[3]。合衆国外では北アメリカ大陸(カナダとメキシコ)、ヨーロッパ(ドイツ[1]、フランス、スペイン、ポーランド)、アフリカ大陸やその周辺(イスラエル、エジプト、マダガスカル、アンゴラ、ナイジェリア)で産出している[3]。ドイツ北部産のD. polyplocumは上部カンパニアン階、フランス南部のビスケー湾地域産のD. cylindraceumはマーストリヒチアン階に由来する[1]。
日本においてはD. awajienseが四国に分布する上部白亜系である和泉層群の代表的な異常巻きアンモナイトであり[6]、同層群にはDidymoceras cheyennense帯とDidymoceras sp.帯が存在する[1]。和泉層群からは本属の別種であるD. morozumiiもカンパニアン階から報告されている[7]。また本属は北海道に分布する蝦夷層群からも産出しており、浦河町で発見された上部カンパニアン階の種は日高地域にちなんでD. hidakenseと命名されている[5][1]。
分類
本属はノストセラス属の亜属とされる場合もあるが、独立属とする見解も少なくない[1]。逆に本属のジュニアシノニムと考えられている属にはボストリコセラス属[1]やCirroceras属[2]、Didymoceratoides属[3]、Emperoceras属[3]がある。
以下は本属に属する種の一覧である。特に断りが無い限りはPaleobiology Databaseに基づく[8]。
- D. angulatum
- D. attenuatum
- D. aurarium
- D. awajiense
- D. binodosum
- D. californicum
- D. cheyenense
- D. cheyennense
- D. cochleatus
- D. cooperii
- D. cylindraceum[1]
- D. densecostatum
- D. donezianum
- D. draconis
- D. hidakense
- D. hornbyense
- D. nebrascense
- D. newtoni
- D. nicolletii
- D. morozumii[1]
- D. obtusum
- D. platycostatum
- D. polyplocum[1]
- D. postremum
- D. stevensoni
- D. subtuberculatum
- D. tenuicostatus
- D. tortus
- D. tricostatus
- D. umbilicatus
- D. uncus
- D. vancouverensis(D. fresnoenseのシノニム)
- D. varium
- D. vespertinus
- D. whiteavesi

和泉層群から化石が産出したD. morozumiiとD. awajienseとは、前者が後者の祖先型という形で祖先-子孫関係を有していたと推測されている[7]。またD. awajienseは鳴門市や淡路島から化石が産出するプラビトセラスの祖先型でもあると推測されており、D. morozumiiからプラビトセラスに至る進化の道筋が考えられている[7]。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k Akihiro Misaki; Yasuyuki Tsujino (2021-04-01). “A New Species of the Heteromorph Ammonoid Didymoceras from the Upper Cretaceous Izumi Group in Shikoku, Southwestern Japan, and Its Evolutionary Implications”. Paleontological Research 25 (2): 127-144. doi:10.2517/2020PR010 .
- ^ a b Cobban, W. A (1970). “Occurrence of the Late Cretaceous ammonites Didymoceras stevensoni (WHITFIELD) and Exiteloceras jenneyi (WHITFIELD) in Delaware”. Geological Survey research. U.S. Department of the Interior, Geological Survey
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o W. J. KENNEDY; N. H. LANDMAN; W. A. COBBAN; G. R. SCOTT (2000-04-01). <0001:LCCHAF>2.0.CO;2 “LATE CAMPANIAN (CRETACEOUS) HETEROMORPH AMMONITES FROM THE WESTERN INTERIOR OF THE UNITED STATES”. Bulletin of the American Museum of Natural History (251): 1-86. doi:10.1206/0003-0090(2000)251<0001:LCCHAF>2.0.CO;2 .
- ^ a b c d 守山容正『採集と見分け方がバッチリわかる アンモナイト図鑑』築地書館、2022年8月5日、155頁。ISBN 978-4-8067-1640-2。
- ^ a b c d “ディディモセラス・ヒダケンゼ”. むかわ町恐竜ワールド. 2025年9月15日閲覧。
- ^ a b c “ディディモセラス Didymoceras awajiense”. 文化の森総合公園徳島県立博物館. 2025年9月15日閲覧。
- ^ a b c 『「二枚貝と共生する奇妙な形をしたアンモナイトの新種を発見」詳細資料』(プレスリリース)北九州市立いのちのたび博物館、徳島県立博物館、大阪市立自然史博物館、2021年4月20日 。2025年9月15日閲覧。
- ^ “PBDB Taxon”. 2025年9月14日閲覧。
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