ツェルメロ=フレンケル集合論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/05 08:40 UTC 版)
集合論において、ツェルメロ=フレンケル集合論(英: Zermelo-Fraenkel set theory)とは、ラッセルのパラドックスなどのパラドックスのない集合論を定式化するために20世紀初頭に提案された公理系である。名前は数学者のツェルメロとフレンケルにちなむ。歴史的に議論を呼んだ選択公理 (AC) を含むツェルメロ=フレンケル集合論は公理的集合論の標準形式であり、今日では最も一般的な数学の基礎となっている。選択公理を含むツェルメロ=フレンケル集合論はZFCと略される。Cは選択 (Choice) 公理を[1] 、 ZFは選択公理を除いたツェルメロ (Zermelo)=フレンケル (Fraenkel) 集合論の公理を表す。
概要
ツェルメロ=フレンケル集合論は、単一の原始概念の形式化、すなわち整礎な純粋集合の概念の形式化を目的としているため、議論領域内のすべての対象 (entity) はそのような集合となる。したがって、ツェルメロ=フレンケル集合論における公理は純粋集合のみに言及し、そのモデルに原始元(アトム)が含まれないようにしている。さらに、真のクラス[注釈 1]は間接的にしか扱えない。具体的には、ツェルメロ=フレンケル集合論では、全体集合(すべての集合を含む集合)の存在も無制限の内包も許容しないため、ラッセルのパラドックスを回避できる。フォン・ノイマン=ベルナイス=ゲーデル集合論(NBG) は、ツェルメロ=フレンケル集合論の保存拡大としてよく用いられており、真のクラスを明示的に扱うことができる。
ツェルメロ=フレンケル集合論の公理には多くの同値な定式化が存在する。ほとんどの公理は、他の集合から定義された特定の集合の存在を主張する。たとえば対の公理は、任意の2つの集合 カテゴリ
ツェルメロ=フレンケル集合論(ZF公理系)
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「公理的集合論」の記事における「ツェルメロ=フレンケル集合論(ZF公理系)」の解説
詳細はツェルメロ=フレンケルの公理系 (ZF: Zermelo-Fraenkel) を参照されたいが、これは以下の公理からなる。 外延性の公理 A と B が全く同じ要素を持つのなら A と B は等しい: ∀ A ∀ B ( ∀ x ( x ∈ A ↔ x ∈ B ) → A = B ) {\displaystyle \forall A\forall B(\forall x(x\in A\leftrightarrow x\in B)\rightarrow A=B)} 。 空集合の公理 要素を持たない集合が存在する: ∃ A ∀ x ( x ∉ A ) {\displaystyle \exists A\forall x(x\notin A)} 。 外延性の公理から、空集合の公理が存在を主張する集合はただ一つであることが言えるので、これを空集合と呼び、 ∅ {\displaystyle \varnothing } で表す。 対の公理 任意の要素 x, y に対して、x と y のみを要素とする集合が存在する: ∀ x ∀ y ∃ A ∀ t ( t ∈ A ↔ ( t = x ∨ t = y ) ) {\displaystyle \forall x\forall y\exists A\forall t(t\in A\leftrightarrow (t=x\vee t=y))} 。 外延性の公理から、x と y に対して対の公理が存在を主張する集合はただ一つであることが言えるので、これを { x , y } {\displaystyle \{x,y\}\,} で表す。 { x , x } {\displaystyle \{x,x\}\,} を { x } {\displaystyle \{x\}\,} で表す。これにより順序対の存在が言え、それにより直積集合の存在も言える。 和集合の公理 任意の集合 X に対して、X の要素の要素全体からなる集合が存在する: ∀ X ∃ A ∀ t ( t ∈ A ↔ ∃ x ∈ X ( t ∈ x ) ) {\displaystyle \forall X\exists A\forall t(t\in A\leftrightarrow \exists x\in X(t\in x))} 。 外延性の公理から、X に対して和集合の公理が存在を主張する集合はただ一つであることが言えるので、これを X の和集合と呼び、 ⋃ X {\displaystyle \bigcup X} で表す。 ⋃ { x , y } {\displaystyle \bigcup \{x,y\}} を x ∪ y {\displaystyle x\cup y} で表す。 無限公理 空集合を要素とし、任意の要素 x に対して x ∪ {x} を要素に持つ集合が存在する: ∃ A ( ∅ ∈ A ∧ ∀ x ∈ A ( x ∪ { x } ∈ A ) ) {\displaystyle \exists A(\varnothing \in A\wedge \forall x\in A(x\cup \{x\}\in A))} 。 冪集合公理 任意の集合 X に対して X の部分集合全体の集合が存在する: ∀ X ∃ A ∀ t ( t ∈ A ↔ t ⊆ X ) ) {\displaystyle \forall X\exists A\forall t(t\in A\leftrightarrow t\subseteq X))} 。 外延性の公理から、X に対して冪集合の公理が存在を主張する集合はただ一つであることが言えるので、これを X の冪集合と呼び、 P ( X ) {\displaystyle {\mathcal {P}}(X)} または2xで表す。 置換公理 "関数クラス"による集合の像は集合である: ∀ x ∀ y ∀ z ( ( ψ ( x , y ) ∧ ψ ( x , z ) ) → y = z ) → ∀ X ∃ A ∀ y ( y ∈ A ↔ ∃ x ∈ X ψ ( x , y ) ) {\displaystyle \forall x\forall y\forall z((\psi (x,y)\wedge \psi (x,z))\rightarrow y=z)\rightarrow \forall X\exists A\forall y(y\in A\leftrightarrow \exists x\in X\psi (x,y))} 。 この公理は、論理式 ψ をパラメータとする公理図式である。 正則性公理(基礎の公理) 空でない集合は必ず自分自身と交わらない要素を持つ: ∀ A ( A ≠ ∅ → ∃ x ∈ A ∀ t ∈ A ( t ∉ x ) ) {\displaystyle \forall A(A\neq \varnothing \rightarrow \exists x\in A\forall t\in A(t\notin x))} 。 正則性公理はジョン・フォン・ノイマンによって導入された(1925年)。
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