タチウオ科とは? わかりやすく解説

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タチウオ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/03 15:19 UTC 版)

タチウオ科
タチウオ Trichiurus japonicus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : サバ亜目 Scombroidei
: タチウオ科 Trichiuridae
英名
Cutlassfishes
下位分類
本文参照

タチウオ科学名Trichiuridae)は、スズキ目サバ亜目またはサバ目に所属する魚類の分類群の一つ。3亜科で構成され、タチウオなど少なくとも10属44種が記載される[1]

分布・生態

タチウオ科の魚類はすべて海水魚で、太平洋インド洋大西洋など世界中の海に幅広く分布する[1]。多くの種類が200m以深の深海で生活する深海魚で、大陸斜面など海底付近を遊泳して生活すると考えられている[2]。オビレタチ Lepidopus caudatus など一部の種類は、夜間に餌を求めて海面付近に浮上する、日周鉛直移動を行うことが知られている[2]

本科魚類の多くは牙のような鋭い歯を備えているが、大型の動物プランクトンを中心に捕食するとみられている[3]。食用魚として漁獲対象となる種類が多く、特にタチウオ Trichiurus lepturus は世界の年間漁獲量が150万トンに達し、魚種別の上位10位に入るなど漁業上きわめて重要な存在となっている[3]

形態

タチモドキ属の1種(Benthodesmus simonyi)。細長く側扁した体型と、体のほぼ全長にわたる長い背鰭が本科魚類に共通する特徴である

タチウオ科の仲間は非常に細長く、側扁した体型をもつ[1]。体色は光沢をもつ銀色であることが多く[3][4]和名のタチウオ(太刀魚)や英名のCutlassfish(カットラス:船乗りに多く用いられた湾曲した剣)は、この体つきを刀剣に見立てたものである。

背鰭は透明でその基底は著しく長く、前半の棘条部と、それよりも長い軟条部からなる[1][4]。クロタチモドキ亜科の仲間は、棘条部と軟条部の間に切れ込みをもつ[1]。臀鰭は2棘56-121軟条で、胸鰭は体の低い位置にある[1]。尾鰭は小さく退化的で、もたない種類もある[1]。腹鰭はもたないか、あるいは非常に小さく痕跡的で、状の棘条と1本の軟条で構成される[1]。尾柄部に小離鰭をもたないことが、近縁のクロタチカマス科サバ科との重要な鑑別点となっている[1]

下顎を前に突き出すことができ、牙のように長く鋭い歯を備える[1]。主上顎骨は前眼窩骨によって覆われ、椎骨は58-192個[2]

分類

タチウオ科にはNelson(2016)の体系において3亜科10属44種が認められている[1]。本稿では、FishBaseに記載される10属46種についてリストする[2]

クロタチモドキ亜科

クロタチモドキ属の一種 Aphanopus carbo。北大西洋に分布する水産重要種[2]
タチモドキ Benthodesmus tenuis (タチモドキ属)。三大洋の大陸斜面に幅広く分布する

クロタチモドキ亜科 Aphanopodinae は2属18種で構成される。二又に分かれた小さいが明瞭な尾鰭と、腹鰭をもつことが特徴[1]。背鰭の棘条は38-46本で、軟条部との境界にはわずかな切れ込みが存在する[1]

  • クロタチモドキ属 Aphanopus
    • クロタチモドキ Aphanopus arigato
    • Aphanopus beckeri
    • Aphanopus capricornis
    • Aphanopus carbo
    • Aphanopus intermedius
    • Aphanopus microphthalmus
    • Aphanopus mikhailini
  • タチモドキ属 Benthodesmus
    • ヤマトタチモドキ Benthodesmus elongatus
    • Benthodesmus macrophthalmus
    • Benthodesmus neglectus
    • Benthodesmus oligoradiatus
    • Benthodesmus pacificus
    • Benthodesmus papua
    • Benthodesmus simonyi
    • Benthodesmus suluensis
    • タチモドキ Benthodesmus tenuis
    • Benthodesmus tuckeri
    • Benthodesmus vityazi

オビレタチ亜科

ナガユメタチモドキ Assurger anzac (ナガユメタチモドキ属)。尾鰭の有無は本科魚類の重要な分類形質となっている。本種は小さいが明瞭な尾鰭をもつ[5]
オビレタチ Lepidopus caudatus (オビレタチ属)。夜間に表層に浮上する習性をもつ、漁業対象種[2]
ユメタチモドキ Evoxymetopon taeniatus (ユメタチモドキ属)。牙状の歯が明瞭
タチウオ Trichiurus japonicus (タチウオ属)。世界の海に分布する T. lepturus とは、遺伝的な差異から別種とされている。

オビレタチ亜科 Lepidopodinae にNelson(2016)は4属12種を認めている[1]

腹鰭をもつが、尾鰭の有無はさまざま。背鰭の棘条は3-10本で、軟条部とは切れ込みをもたず連続する。側線は胸鰭の後方から徐々に斜めに下がって走行する[1]

  • オシロイダチ属 Eupleurogrammus
    • Eupleurogrammus glossodon
    • オシロイダチ Eupleurogrammus muticus
  • オビレタチ属 Lepidopus
    • Lepidopus altifrons
    • Lepidopus calcar
    • オビレタチ Lepidopus caudatus
    • Lepidopus dubius
    • Lepidopus fitchi
    • Lepidopus manis
  • ナガユメタチモドキ属 Assurger
    • ナガユメタチモドキ Assurger anzac
  • ユメタチモドキ属 Evoxymetopon
    • ヒレナガオオメユメタチ[6] Evoxymetopon macrophthalmus
    • ヒレナガユメタチ Evoxymetopon poeyi
    • ユメタチモドキ Evoxymetopon taeniatus

タチウオ亜科

タチウオ亜科 Trichiurinae にはNelson(2016)の体系において4属14種が認められている。宮崎大学農学部岩槻博士らの一連の研究により、多くの種の実態が明らかになってきた。FishBaseには下記の有効種が存在するとされるが、日本で知られるオキナワオオダチや、テンジクダチの学名の問題を含め、今後世界的なレビューが必要であろう。

他の2亜科と比べ骨格の退縮傾向が強く、尾鰭と下尾骨、腹鰭とその支持骨格を欠く[1]。背鰭の棘条は3-4本で、軟条部と連続する[1]。側線は胸鰭の後方で下向きに曲り、腹側近くを走行する[1]

  • Demissolinea
    • Demissolinea novaeguineensis
  • トゲタチウオ属 Lepturacanthus
    • トゲタチウオ Lepturacanthus savala
    • Lepturacanthus pantului
    • Lepturacanthus roelandti
  • カンムリダチ属 Tentoriceps
    • カンムリダチ Tentoriceps cristatus
  • タチウオ属 Trichiurus
    • Trichiurus auriga
    • Trichiurus australis
    • Trichiurus brevis
    • Trichiurus gangeticus
    • タチウオ Trichiurus japonicus
    • Trichiurus lepturus
    • Trichiurus margarites
    • Trichiurus nanhaiensis
    • Trichiurus nickolensis
    • Trichiurus russelli

出典・脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 『Fishes of the World Fifth Edition』 pp.415-416
  2. ^ a b c d e f Trichiuridae”. FishBase. 2025年4月3日閲覧。
  3. ^ a b c 『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.319
  4. ^ a b 『深海調査船が観た深海生物』 p.380
  5. ^ 『日本の海水魚』 p.655
  6. ^ 日本産魚類の追加種リスト”. 日本魚類学会. 2010年11月21日閲覧。

参考文献

外部リンク


タチウオ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/09/01 04:06 UTC 版)

サバ亜目」の記事における「タチウオ科」の解説

タチウオ科 Trichiuridae はタチウオ・タチモドキ・ヒレナガユメタチなど3亜科1039種で構成される深海底での生活に適応し遊泳力は比較的低いが、夜に浅海浮上するものもいる。 体はリボン状で、背鰭棘条部と軟条部が連続し、小離を欠く。腹鰭尾鰭退化傾向強く種類によっては消失するクロタチモドキ亜科 Aphanopodinaeクロタチモドキ属 Aphanopus タチモドキ属 Benthodesmus オビレタチ亜科 Lepidopodinaeオシロイダチ属 Eupleurogrammus オビレタチ属 Lepidopus カンムリダチ属 Tentoriceps ナガユメタチモドキ属 Assurger ユメタチモドキ属 Evoxymetopon タチウオ亜科 Trichiurinaeタチウオ属 Trichiurus トゲタチウオ属 Lepturacanthus Demissolinea 属

※この「タチウオ科」の解説は、「サバ亜目」の解説の一部です。
「タチウオ科」を含む「サバ亜目」の記事については、「サバ亜目」の概要を参照ください。

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