【セミアクティブレーダー誘導】(せみあくてぃぶれーだーゆうどう)
ミサイルの中間・終端誘導における一方式。
主に対空ミサイルに用いられる。
ミサイルを発射するプラットフォーム(航空機・車両・施設・艦船)が目標に向けて強力なレーダー波を照射し、弾体に備えられた受信機がそのレーダー波と目標の反射波を感知して舵を切り、目標へ向かうものである。
1958年に実用化されたAIM-7に採用されて以後、1990年代にアクティブレーダー誘導が実用化されるまでは、実用となるレーダー誘導といえばほぼこれであった。
特徴としては
- ビームライディング誘導に比べて、ミサイル自体の機動がある程度自由であること
- アクティブレーダー誘導に比べて、ミサイル側の誘導装置が少なく安価に済むこと
- アクティブレーダー誘導に比べて、高出力のイルミネーターを使用するため、電波妨害に強いこと。
- 発射側がレーダー波を照射するため、相手に見つかる可能性があること
- 発射側のレーダーの照射範囲内に目標が常にいなければならないため、発射側の機動が大きく制限されること
- イルミネーターの数により、同時に誘導できるミサイルの数に限りがあること
等が有る。
現在の軍用機では、電子機器の小型化により撃ちっ放しにすることが出来るアクティブレーダー誘導が主流となっている。
しかし、電波妨害に強いという利点があるため、特に高出力のイルミネーターを使用出来る艦船や陸上施設・車両から運用する長距離ミサイルでは、指令誘導や慣性誘導を併用して実現するものが多い。(MIM-104のTVM誘導等)
セミアクティブ・レーダー・ホーミング
(セミアクティブ・レーダー誘導 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/05 14:08 UTC 版)
セミアクティブ・レーダー・ホーミング(英語: Semi-active radar homing, SARH)は、ミサイル本体は受信機しか持たず、発射母体などミサイル外部にある送信機が目標に照射した電波(レーダー波)の反射波を用いてホーミング誘導を行う方式。誘導装置のうち半分(セミ)の送信機がミサイル外部にあることからセミアクティブと呼ばれる[1]。
原理
レーダーを用いたホーミング誘導のうち、ミサイルには受信機のみを搭載して、地上レーダーや航空機など他のシステムが目標に照射した反射信号を受信して追いかける方式を指す[2][3]。
ミサイル外部の追尾レーダーからの電波を用いてミサイルを誘導するという点ではビームライディングと類似するが、SARHの場合は目標に電波を照射するだけで、ビームライディングのようにレーダービームが高精度で目標を追尾する必要はなく、また反射波をミサイルで受信できれば距離に関係なく常に高い命中精度を得ることができる[2]。またビームライディングでは特に命中直前にミサイルの飛翔経路が著しく湾曲し、理想となる直線経路から大きく離れてしまうのに対し、SARHはホーミング誘導であることから比例航法 (Proportional navigation) が基本となり、より直線的な経路で飛翔できるというメリットもある[2]。
目標に対して発射されたレーダー波の反射エネルギーを利用してホーミング誘導を行うという点ではアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)と共通するが、アクティブ方式では送信機をミサイルに搭載しなければならないために制約があり、大きな出力を得られないのに対し、セミアクティブ方式では送信機は航空機や地上に設置されるために形状・重量に余裕が取れて大きな出力が得られるという利点がある[4]。一方で、特に発射母体が送信を担っている場合、ミサイルが命中するまでは送信を続ける必要があり、回避行動などが制約されるという問題がある[4]。このため、送信機が固体化されて小型軽量化および信頼性の改善が進むと、元来はセミアクティブ方式が用いられていた用途でもアクティブ方式が普及していくことになった[5]。
ミサイルのシーカーの探知距離は発射母体のレーダーのものよりも短いため、遠距離の目標を射撃する場合には、SARH方式による誘導は終末航程のみとして、中途航程には慣性航法や指令航法などを併用し、時系列的な複合誘導方式とする場合が多い[2]。
脚注
出典
参考文献
- 久野治義『ミサイル工学事典』原書房、1990年。ISBN 978-4562021383。
- 防衛技術ジャーナル編集部 編『航空装備の最新技術』防衛技術協会〈新・兵器と防衛技術シリーズ〉、2016年。 ISBN 490880205X。
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