ジュール・トムソン膨張とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > ジュール・トムソン膨張の意味・解説 

ジュール=トムソン効果

(ジュール・トムソン膨張 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/05 00:13 UTC 版)

ジュール=トムソン効果(ジュール=トムソンこうか、: Joule–thomson effect[1])とは、気体を多孔質壁を通して両側の圧力を一定に保ちながら膨張させた時に温度が変化することである。1852年に観測された現象に対して、ジェームズ・プレスコット・ジュールウィリアム・トムソン(ケルビン卿)によって1861年に提唱された。この現象は気体液化などに今日も応用されている。1908年ヘイケ・カメルリング・オネスはこの効果を利用して、ヘリウムの液化できる温度0.9 K (= −272.25 °C) を達成した。

この膨張の過程はジュール=トムソン膨張 (Joule–thomson expansion[1]) と呼ばれる。膨張に伴って温度が下降するか、上昇するかは膨張前の温度によって決まり、温度の上昇と下降が入れ替わる温度は逆転温度と呼ばれる。

概要

気体が入る2つの部屋を、多孔質壁を介してつなぎ、2つの部屋それぞれの圧力を均一に保つ条件のもと、一方の部屋から他方へと気体を押し出すというものが、ジュール=トムソン膨張である。例えば圧力レギュレータで一定圧力に調整されたガスを多孔質を通して大気へ解放する状況がこれに当てはまる。このとき、終状態の圧力は始状態の圧力よりも必ず低くなる。ジュール=トムソン効果は分子間距離が増大する際、分子間力に対して仕事をするために起こる。そのため理想気体ではこの現象は起こらない。高圧の気体の冷却効果として重要である。また、液化した気体の気化熱による冷却や断熱膨張による冷却とは区別する必要がある。

ジュール=トムソン係数

ジュール=トムソン係数
Joule–thomson coefficient
量記号 μJ-T
次元 L3 E−1 Θ
種類 スカラー
SI単位 ケルビンパスカル (K/Pa)
テンプレートを表示

ジュール=トムソン膨張は外部と熱のやり取りを行わない断熱過程であるが、不可逆過程でありエントロピーは増加する。一方で始状態と終状態でエンタルピーは変化せず、等エンタルピー過程であるといえる。圧力と温度で表した状態空間(T-p 図)上に等エンタルピー曲線を描いたとき、この曲線の傾き


ジュール=トムソン膨張

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 00:00 UTC 版)

熱力学的状態方程式」の記事における「ジュール=トムソン膨張」の解説

ファンデルワールスの状態方程式に従う気体がジュール=トムソン膨張するときは、断熱自由膨張のときとは違って気体温度低くなることも高くなることもある。温度変化向き膨張前の温度圧力におけるジュール=トムソン係数 μJT符号によって決まる。温度低下上昇入れ替わる温度を、ジュール=トムソン効果逆転温度という。熱力学的状態方程式を使うと、逆転温度 Tinv の圧力依存性ファンデルワールスの状態方程式から導くことができる。 逆転温度 Tinv は、ジュール=トムソン係数 μJTゼロになる温度である。 μJT は、先に示したように (∂H/∂P)T に比例する。よって、熱力学的状態方程式 ( ∂ H ∂ P ) T = V − T ( ∂ V ∂ T ) P {\displaystyle \left({\frac {\partial H}{\partial P}}\right)_{T}=V-T\left({\frac {\partial V}{\partial T}}\right)_{P}} から V = T ( ∂ V ∂ T ) P {\displaystyle V=T\left({\frac {\partial V}{\partial T}}\right)_{P}} のとき、すなわち T = V ( ∂ T ∂ V ) P {\displaystyle T=V\left({\frac {\partial T}{\partial V}}\right)_{P}} のときに μJT = 0 となることが分かる。よって逆転温度 Tinv は、ファンデルワールスの状態方程式 T = Vn b n R [ P + a ( n V ) 2 ] {\displaystyle T={\frac {V-nb}{nR}}\left[P+a\left({\frac {n}{V}}\right)^{2}\right]} および、これを先の式に代入して得られる方程式 T = V ( ∂ ∂ V Vn b n R [ P + a ( n V ) 2 ] ) P {\displaystyle T=V\left({\frac {\partial }{\partial V}}{\frac {V-nb}{nR}}\left[P+a\left({\frac {n}{V}}\right)^{2}\right]\right)_{P}} を同時に満たす T として求めればよい。適当な代数計算によりこれら二つ方程式から V を消去すると T inv = 2 a 9 b R ( 2 ± 1 − 3 b 2 a P ) 2 {\displaystyle T_{\text{inv}}={\frac {2a}{9bR}}\left(2\pm {\sqrt {1-{\frac {3b^{2}}{a}}P}}\right)^{2}} となり、逆転温度 Tinv が圧力 P の関数として得られる得られた Tinv の式から、P < a/3b2 となる圧力においては逆転温度が二つあることが分かる。十分に高い温度では μJT < 0 なので、二つの逆転温度に挟まれた温度領域では μJT > 0 である。この温度領域では、ジュール=トムソン膨張により気体の温度が下がる。圧力が高くなるにつれて μJT > 0 となる温度範囲は狭まり、P > a/3b2 となる圧力においては逆転温度は存在しない。すなわち、ジュール=トムソン膨張により気体を冷却できる圧力には上限があることが分かる。

※この「ジュール=トムソン膨張」の解説は、「熱力学的状態方程式」の解説の一部です。
「ジュール=トムソン膨張」を含む「熱力学的状態方程式」の記事については、「熱力学的状態方程式」の概要参照ください

ウィキペディア小見出し辞書の「ジュール・トムソン膨張」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

カテゴリ一覧

すべての辞書の索引



Weblioのサービス

「ジュール・トムソン膨張」の関連用語



3
32% |||||




ジュール・トムソン膨張のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ジュール・トムソン膨張のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのジュール=トムソン効果 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの熱力学的状態方程式 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS