シテール島への巡礼 (シュテーデル美術館)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/12 18:13 UTC 版)
| ドイツ語: Einschiffung nach Kythera 英語: The Embarkation for Cythera |
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| 作者 | アントワーヌ・ヴァトー |
|---|---|
| 製作年 | 1709-1710年ごろ |
| 素材 | キャンバス、油彩 |
| 寸法 | 45.5 cm × 56 cm (17.9 in × 22 in) |
| 所蔵 | シュテーデル美術館、フランクフルト |
『シテール島への巡礼』 (シテールとうへのじゅんれい、独: Einschiffung nach Kythera、英: The Embarkation for Cythera) は、フランスのロココ期の画家アントワーヌ・ヴァトーが17109-1710年ごろに制作した油彩画である。1982年に購入されて以来[1]、フランクフルトのシュテーデル美術館に所蔵されている[1][2]。ヴァトーは1717年に制作した同主題の『シテール島の巡礼』 (ルーヴル美術館、パリ) でフランスの王立絵画彫刻アカデミーへの入会を認められたが、この絵画はそれに先だつ作品となっている[2]。ちなみに、当時の版画によれば、本作の題名は「シテール島 (仏: Ile de Cythère)」であった[1]。
作品
シテール島とは、ギリシアの沖合に浮かぶキュテラ島のフランス語読みである。ギリシア神話によれば、愛の女神ヴィーナスが海の泡から誕生して初めて上陸した場所で、女神を祀った豪華な神殿があったとされる。そのため、シテール島は愛の桃源郷と見なされ、独身者が巡礼すれば、必ず良き伴侶を得られるという伝説が生まれた[2]。
ヴァトーは、「シテール島」の主題で3点の絵画を描いた。その1点目にあたる本作は、ヴァトーが見た風俗喜劇『3人の従姉妹たち』に触発されたとされる。これは、フランスの劇作家フロラン・カルトン (1661-1725年) による、当時の市民階級の風俗を題材とした演劇である。シテール島へ巡礼すれば、恋愛が成就するという伝説は当時、演劇の題材としても好まれていた[2]。
本作の画面では、3人の娘たちが望み通りの伴侶を得るためにシテール島へ出発しようとしているところであり、彼女たちは乗船するゴンドラの前に集まっている[1][2]。背景に見えるのがシテール島で、そこには数多くのキューピッドが見える。しかし、背景の風景は、実際にはパリ郊外の身近なキリスト教の巡礼地、サン=クルーの風景に類似しているという[2]。
なお、ヴァトーが後に描いた、ルーヴル美術館 (パリ) およびシャルロッテンブルク宮殿 (ベルリン) 蔵の2点の『シテール島の巡礼』には、人物たちがすでにシテール島にいるのか、それともシテール島に出発しようとしているのか2通りの解釈があるが、ルーヴル美術館の作品は『シテール島の巡礼』、シャルロッテンブルク宮殿の作品は『シテール島への巡礼』という題名を与えられている[2]。
ギャラリー
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ヴァトー『シテール島の巡礼』(1717年)、ルーヴル美術館、パリ
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ヴァトー『シテール島への巡礼』 (1718-1719年ごろ)、シャルロッテンブルク宮殿、ベルリン
脚注
参考文献
- 『週刊西洋絵画の巨匠 45 ヴァトー』、小学館、2010年刊行
外部リンク
- シテール島への巡礼_(シュテーデル美術館)のページへのリンク