イタリア喜劇の恋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/09 01:48 UTC 版)
| ドイツ語: Die italienische Komödie 英語: Love in the Italian Theatre |
|
| 作者 | アントワーヌ・ヴァトー |
|---|---|
| 製作年 | 1716年 |
| 素材 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 37 cm × 48 cm (15 in × 19 in) |
| 所蔵 | 絵画館 (ベルリン) |
『イタリア喜劇の恋』 (イタリアきげきのこい、仏: L'amour au théâtre italien、英: Love in the Italian Theatre) 、または『イタリア喜劇』(イタリアきげき、独: Die italienische Komödie、英: The Italian Theatre) は、フランスのロココ期の巨匠アントワーヌ・ヴァトーが1716年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。1769年以前に、フリードリヒ2世 (プロイセン王) がサンスーシー宮殿内の自身のギャラリー用に対作とされる『フランス喜劇の恋』とともに購入し[1][2]、現在、絵画館 (ベルリン) に所蔵されている[1][2][3]。
背景
フランスの18世紀は演劇の黄金時代といわれるほど、王侯貴族から庶民まで演劇熱が高まった時代である[4]。当時のパリには、王立のコメディ・フランセーズ (フランス喜劇) のような大劇場を舞台にするものから、アクロバット的な笑劇を行う縁日芝居、素人芝居まで様々なものがあった[4][5]。ヴァトー自身、非常に演劇好きで、彼の作品には演劇と関連を持つものが少なくない[5]。実際、ヴァトーは、紳士淑女の遊興を主題とした、いわゆる雅宴画を描く前に「芝居画」で人気を博したのである[4]。
作品
この絵画はヴァトーが描いた唯一の夜景図で、夜間に屋外で上演された喜劇を表したものである[3]。画面の空き地には、イタリア喜劇「コンメディア・デッラルテ」の12人の俳優たちが集っている。そのため、この情景は、演劇の最後の場面と見なすことができる[1]。一列に並んだ彼らは当時の人々にはなじみ深い、滑稽な登場人物たち演じており、上品はフランス喜劇とは対照的な、くだけたイタリア喜劇の雰囲気を見事に伝えている[3]。
中央にギターを持って立っているのはピエロで、その左横には手に仮面を持ったコロンビーナと、年老いたパンタローネの方を振り向いたイザベラがいる。ピエロの右側には警戒した態度のアルルカン、プルチネッラ (?)、そして松明を持つメッツェッティーノ、杖で身体を支える医師のマルチジーノ、そしてスカラムッチアがいる[1]。1734年のエングレービングに付された説明によると、本作でヴァトーは衣装を着けた自身の友人たちを描いた[1]。
本作『イタリア喜劇の恋』と『フランス喜劇の恋』は、1734年に制作されたシャルル=ニコラ・コシャンが制作した一対のエングレービングからその題名が付けられている[1]。なお、ヴァトーの多くの作品は彼の制作技法のために保存状態がよくないが、これら両作品は非常に保存状態がよく、彼の最も美しい作品のうちに数えられる[1]。
脚注
参考文献
- 有川治男・重延浩・高草茂編集『NHK ベルリン美術館1 ヨーロッパ美術の精華』、角川書店、1993年刊行 ISBN 4-04-650901-5
- 『週刊西洋絵画の巨匠 45 ヴァトー』、小学館、2010年刊行
- 五木寛之編著『NHK エルミタージュ美術館 2 ルネサンス・バロック・ロココ』、日本放送出版協会、1989年刊行 ISBN 4-14-008624-6
外部リンク
- イタリア喜劇の恋のページへのリンク