愛の宴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/09 01:44 UTC 版)
| ドイツ語: Das Liebesfest 英語: The Feast of Love |
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| 作者 | アントワーヌ・ヴァトー |
|---|---|
| 製作年 | 1718-1719年 |
| 素材 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 61.3 cm × 75.2 cm (24.1 in × 29.6 in) |
| 所蔵 | アルテ・マイスター絵画館、ドレスデン |
『愛の宴』 (あいのうたげ、独: Das Liebesfest、英: The Feast of Love) は、フランスのロココ期の巨匠アントワーヌ・ヴァトーが晩年の1718-1719年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。現在、ドレスデンのアルテ・マイスター絵画館に所蔵されている[1][2][3]。ヴァトーが1717年に『シテール島の巡礼』 (ルーヴル美術館、パリ) で確立した雅宴画の1つである[3]。
作品
緩い筆致で描かれ、とりわけ美しい日没前の陽光に浸された風景[1]が対角線構図の中に表されている[3]。不規則な木々の列が画面を斜めに横切り、鑑賞者に野原、流れる川、建物を垣間見させる。遠景には丘と朧な地平線が見える[2]。木立を介した、2つの雅な人々の集団がおり[3]、恋愛中の男女が地面に座ったり、散策したりしている[1][2]。見えにくいが、子供や小さな犬の姿も確認できる[2]。人々や木立、野原が作る緩やかなリズムが鑑賞者の視線を遠い彼方の夢の世界へと誘ってゆく[1]。
人々が立ち去りつつ鑑賞者の方を振り返っているのは、ヴァトー特有の別れのモティーフである。右側に立つ愛の女神ヴィーナスと彼女の息子キューピッドの彫像は、ほぼ同じころに描かれた第2ヴァージョンの『シテール島への巡礼』 (シャルロッテンブルク宮殿、ベルリン) の右端にも見られる。彫像のヴィーナスはキューピッドから矢でいっぱいの矢筒を取り上げている[1][2]が、彼が明らかに恋の矢を放ちすぎたからである。その結果、人々はお互いに熱烈な恋に陥ってしまっている[1]。
画面には、スナップショットのように捉えられた、肩越しに見返るポーズ、自発的な仕草といった一瞬の情景が表現されている。しかし、この情景は、現実の出来事にもとづいているのでは決してない。本作は、ヴァトーによる詩的な創作なのである[2]。
ちなみに、ヴァトーは素描の名手で、多くの素描を制作しているが、その多くは人物のポーズや表情、衣装を個別的に探求したものである。一方、現存している、この絵画のための赤チョークと鉛筆による素描は絵画と構図全体が一致しており、珍しい例となっている[3]。
脚注
参考文献
- 『ヨーロッパ絵画名作展』、ドレスデン国立美術館、国立西洋美術館、京都国立博物館、日本経済新聞社、1974年刊行
外部リンク
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