フランス喜劇の俳優たち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/07 13:43 UTC 版)
| フランス語: Les Comédiens français 英語: The French Comedians |
|
| 作者 | アントワーヌ・ヴァトー |
|---|---|
| 製作年 | 1720年ごろ |
| 素材 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 57.2 cm × 73 cm (22.5 in × 29 in) |
| 所蔵 | メトロポリタン美術館、ニューヨーク |
『フランス喜劇の俳優たち』 (フランスきげきのはいゆうたち、仏: Les Comédiens français、英: The French Comedians) は、フランスのロココ期の巨匠アントワーヌ・ヴァトーが1720年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。1949年にジュール・バッシュ氏のコレクションから寄贈されて以来[1]、ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されている[1][2]。
背景
フランスの18世紀は演劇の黄金時代といわれるほど、王侯貴族から庶民まで演劇熱が高まった時代である[3]。当時のパリには、コメディ・フランセーズのような大劇場を舞台にするものから、アクロバット的な笑劇を行う縁日芝居、素人芝居まで様々なものがあった[3][4]。ヴァトー自身、非常に演劇好きで、彼の作品には演劇と関連を持つものが少なくない[4]。実際、ヴァトーは、紳士淑女の遊興を主題とした、いわゆる雅宴画を描く前に「芝居画」で人気を博したのである[3]。
作品
本作の題名にある「フランス喜劇」とは、ルイ14世 (フランス王) が創設した王立劇団の1つコメディ・フランセーズのことである[2]。フランス人俳優による劇団で、実際には喜劇だけではなく古典悲劇も演じていた。そもそも「コメディ」とは広義の「劇」を指していた。本作『フランス喜劇の俳優たち』でも、豪華な舞台衣装、宮殿のような舞台設定、俳優たちの洗練された身ぶりにより、格調高い舞台の特徴が明確に表現されている[2]。なお、ヴァトーは『コメディ・フランセーズの俳優たち』 (エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク) では、実在の俳優たちを描いている[4]。
フランス喜劇の俳優たちの衣装や演劇のレパートリーは、ヴァトーが好んだ「イタリア喜劇」コンメディア・デッラルテとは非常に異なっている[1]。本作中央の男性は古めかしい、正式な衣装を身に着けており、当時の18世紀には古典的主題の劇にふさわしかったであろう。ヴァトーらしく、この場面は完全に空想上のもので、実際に知られているオペラや演劇と合致するようなものではない。舞台奥からは、コンメディア・デッラルテの常連登場人物の1人クリスパン (Crispin) が入ってきているが、それは本作の場面がありえないものであることを強調している。赤外線リフレクトグラフィーの調査によれば、キャンバスには準備のための下絵が描かれており、それはおそらく建築を専門に描く画家によるものである。ヴァトーは、舞台のような空間を創造するためにそのような画家に頼る習慣があった[1]。
脚注
参考文献
- 『週刊西洋絵画の巨匠 45 ヴァトー』、小学館、2010年刊行
- 五木寛之編著『NHK エルミタージュ美術館 2 ルネサンス・バロック・ロココ』、日本放送出版協会、1989年刊行 ISBN 4-14-008624-6
外部リンク
- フランス喜劇の俳優たちのページへのリンク