シチジンの脱アミノ化と超変異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/12 16:06 UTC 版)
「APOBEC3G」の記事における「シチジンの脱アミノ化と超変異」の解説
APOBEC3Gおよび同じファミリーの他のタンパク質は、活性化誘導(シチジン)デアミナーゼ(AID)として機能できる。APOBEC3Gが逆転写を阻害する機序はHIV DNAへの無数のデオキシシチジンからデオキシウリジンへの変異誘導によるもであるが、この反応は主に相補的DNA(cDNA)の形で発現されるHIV DNAのマイナス鎖に対して3’→5’方向に起こる。APOBEC3GはAPOBECスーパーファミリーに属しており、AIDとして機能するため、シチジン脱アミノ化のためにAPOBEC3Gによって媒介されるメカニズムは、大腸菌のシチジンデアミナーゼのメカニズムと類似しうる。大腸菌のシチジンデアミナーゼはヌクレオチドと亜鉛結合領域周辺でAPOBEC1やAIDと高い相同性を持つことが知られている。現在予測されてる脱アミノ化反応の機序は、亜鉛配位酵素によるシチジンピリミジン環の4位への直接求核的な攻撃によって引き起こされるものである。水は、水素原子とヒドロキシル基ドナーの両方の供給源として必要である。(図2)4位での脱アミノ化(および結果として生じる酸化)により、カルボニル基が生成され、シチジンからウリジンへの変化が起こる。 脱アミノ化活性は最終的に、プロウイルスDNAの「ホットスポット」でG→Aの超変異をもたらす。このような超変異は、最終的にウイルスの遺伝コードおよび複製能力を破壊し、結果として多くの不活化ウイルスをもたらす。 APOBEC3Gは、その活性部位が変異してもはやレトロウイルスDNAを変異誘導できなくなった場合には、抗ウイルス効果は激減する。APOBEC3Gが介在する脱アミノ化は、変異した残基に引き付けられたDNA修復系によって、間接的にウイルスDNAの分解にもつながると、もともとは考えられていた。しかし、ヒトAPOBEC3Gは、DNA修復酵素UNGおよびSMUG1とは独立してウイルスのcDNAレベルを低下させるため、この考えは誤りであると見なされるようになった。
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