ゲイ=リュサックの実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 07:35 UTC 版)
「カロリック説」の記事における「ゲイ=リュサックの実験」の解説
1806年、ゲイ=リュサックは、気体の比熱を求めるための実験を行った。2つの容器をつなぎ、真ん中に弁をつけ、片方の容器に気体を入れる。もう片方の容器は真空にする。そして弁を開けると、気体が真空の容器に流れ込む。この時の両方の容器の温度変化を求める。 結果、弁を開けた直後、気体の入っていた容器の温度は若干下がり、真空だった容器の温度はそれと同じだけ上がり、その後はやがてどちらの容器も実験前の温度に戻った。また、容器の初めの温度変化は、気体が入っていた容器の実験前の圧力が高いほど大きかった。 ゲイ=リュサックはこの結果から、アーヴィン流の熱理論の欠陥を指摘した。アーヴィン流では、気体が膨張する時は比熱が増加し、周囲からカロリックを取り込む。つまり気体の密度が下がると比熱は増加することになるので、真空だと比熱は最大になる。しかし実験では、初めの圧力が小さい、つまり容器内の密度が小さい場合は、温度変化は小さくなる。温度の変化が比熱に比例するならば、真空での比熱は最小、つまりゼロにならなければならない。 よってゲイ=リュサックは、「空気で満たされた空間よりも真空の空間のほうが多くの熱素を含むと信じる人の見解は、まるで根拠がない」と述べたが、一方で、「この結果の解釈がいかに誤りやすいものであるかを自覚しているので、これらの結論をごく控え目に提示しているにすぎない」とも記し、積極的な批判は控えた。 なお、現在の観点から考えれば、この結果はアーヴィン流のみならず、ゲイ=リュサックの支持していたラプラス流のカロリック説をも否定するものであった。というのも、ラプラス流によれば、気体は膨張するとき、カロリックの一部が「潜熱」となり、温度としては現れなくなるのだから、実験の前後で全体の温度は下がらなければならないからである。しかしこの点は当時見過ごされ、そしてこの実験自体も、後にマイヤーが取り上げるまで忘れ去られていった。
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