クレランボーが鑑別標識を定めた意図
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 05:45 UTC 版)
「クレランボー症候群」の記事における「クレランボーが鑑別標識を定めた意図」の解説
クレランボーによると、患者たちは狡猾で隠蔽的で、外見上はまったく正常者を装い得る。司法官や医師さえ容易に騙すこともある。彼らは人がどう判断するかを知っており、自分を尤もらしく見せようとして、妄想がごく限られているふりをするという。妄想を口に出させようとして彼らに面と向かって問いただしても、通常は否定されてしまう。そこで、彼らを操り、ゆさぶり、駆け引きをし、気をそそるような話題を出してみたり、つついたり苛立たせたりして策に乗せ、うっかり本音をもらすようにする必要がある。逆にいえば、彼らが隠蔽のために用いる捉えどころのない言い回しが独特で、たとえば、故意の言いおとし、隠し立て、逃げ口上、虚言、変わりやすい話、日和見的な否認、矛盾した議論、暗黙の了解、はぐらかし、こじつけ、屁理屈、飛躍といった特徴がある。 こうした隠蔽的な性質のため、事件やトラブルが生じた時、根源に恋愛妄想が隠されていても表面上は気づかれないことがあり、恋愛妄想病者の偽の苦情が文字通りに受け取られることがあったり、恋愛妄想ではなく被害妄想だとみなされたりすることになる。犯罪者の精神鑑定を行っていたクレランボーは、問診の際にそうしたケースを見誤らないようにするために、上のような鑑別標識が必要だとした。 たとえば、少しでも実際の人間関係があると、恋愛妄想病者によるトラブルだということが見落とされ、男女関係の縺れだとみなされてしまう。マリー=フランス・イルゴイエンヌも妄想性障害がかかわるモラル・ハラスメントの一例として、恋愛妄想病者による悪意に満ちた陰険なストーカー事件を紹介しているが、裁判では、職場の同僚としての良好な関係から始まっていたという理由で、「職場の関係ではよくあること」といった判断が下されたという。 また、クレランボーの公式によれば、恋愛妄想病者は自分が相手から恋愛感情をもたれ、付きまとわれているという妄想をもつため、「偽のストーキング被害者」として現われることもある。この場合、少なくとも恋愛妄想病者からは、被害者がストーカー加害者として扱われる。 他の鑑別標識としては、反応の強さ、執拗さ、抑制不能性、論理障害、高い緊張感などがあげられている。また、しばしば軽躁状態を示すことがあり、濫書癖がある。
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