クサウオ科とは? わかりやすく解説

クサウオ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/23 14:44 UTC 版)

クサウオ科
Elassodiscus tremebundus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: カサゴ目 Scorpaeniformes
亜目 : カジカ亜目 Cottoidei
上科 : ダンゴウオ上科 Cyclopteroidea
: クサウオ科 Liparidae
英名
Snailfishes
下位分類
本文参照

クサウオ科学名Liparidae)は、カサゴ目に所属する魚類の分類群の一つ。クサウオ・サケビクニンなど、寒冷な海あるいは深海に生息する種類を中心に32属407種が記載される[1]。科名は科のタイプ属 Liparis に科を表す接尾辞「-idae」を付けたもの。属名 Liparis の由来は、ギリシア語の「λιπαρός」(liparos/脂っぽい、オイリーなどの意の形容詞)から[2]

分布・生態

クサウオ科の魚類はすべて海水魚で、太平洋大西洋から北極海南極海にかけての海域に幅広く分布する[1][2]。地理的・環境的分布範囲は極めて広く、ごく浅い沿岸のタイドプールから8,000mを超える深海[3][4]に至るまで、その生息域は多岐にわたる[1]。本科は南氷洋北太平洋および北極海において、もっとも魚種の豊富なの一つとなっている[1]インド洋には比較的少なく、深海から数種が知られているのみである[1]

一般に底生性で、吸盤状に変形した腹鰭を使って海底に腹這いになっていることが多い。インキウオ属とコンニャクウオ属の2属に本科魚類の約2/3にあたるが含まれ、その大半が水深1,000-2,000mの範囲から知られる深海魚である[5]。小型の底生魚類、エビ類を食べる。

形態

Acantholiparis 属の1種(A. opercularis)。細長い体と大きな胸鰭がクサウオ類の特徴で、によっては吸盤状の腹鰭を備える

クサウオ科の仲間は細長くやや側扁した体型をもち、最大種では全長80cmに達する[1]をもたず、皮膚はゼリー状で軟らかい[1]鼻孔は1対か、クサウオ属の多くでは2対である[1]

背鰭と臀鰭の基底は長く、それぞれ28-82本・24-76本の軟条で構成され、しばしば尾鰭と連続する[1]。近縁のダンゴウオ科と共通し、両側の腹鰭が互いに癒合し、吸盤状となっている種類も多い[6]。一方で、インキウオ属およびカンテンウオ属の多くは腹鰭をもたない[1]椎骨は38-86個[1]

分類

クサウオ科にはNelson(2016)の体系において32属407種が認められており[1]FishBaseには32属425種(2亜種を含む)が記載される[2]

本科にはさまざまな亜科の設置が提案されているが、Nelson(2016)の体系ではいずれも支持するための情報が不足しているとして採用されていない[1]

コンニャクウオ属の1種(Careproctus ovigerum)。水深1,324mで撮影。本科魚類はその多くが深海性で、海底付近を漂泳して生活する
クサウオ属の1種(Liparis catharus)。大きな胸鰭はクサウオ類に共通する特徴であり、手指のように分岐した鰭条をもつことが多い[7]
クサウオ属の1種(Liparis fabricii)。体をU字型に折り曲げる姿勢は本属の特徴である[7]
クサウオ属の1種(Liparis marmoratus)。オホーツク海ベーリング海などの寒冷な海から知られる[2]
インキウオ属の1種(Paraliparis bathybius)。北大西洋の深海に生息し、4,000m以深からの捕獲例がある[2]
インキウオ属の1種(Paraliparis antarcticus)。南氷洋の水深300-782mから記録されている[2]
  • Acantholiparis 属(2種)
  • Aetheliparis 属 (2種)
  • Allocareproctus 属(5種)
  • コンニャクウオ属 Careproctus(130種)
    • アイビクニン Careproctus cypselurus
    • アオビクニン Careproctus pellucidus
    • アラスカビクニン Careproctus colletti
    • オグロコンニャクウオ Careproctus furcellus
    • オトヒメコンニャクウオ Careproctus shigemii
    • オホーツクコンニャクウオ Careproctus macrodiscus
    • オボロビクニン Careproctus iacchus
    • カラフトビクニン Careproctus segaliensis
    • クジラコンニャクウオ Careproctus orri
    • クロコンニャクウオ Careproctus homopterus
    • サケビクニン Careproctus rastrinus
    • ザラビクニン Careproctus trachysoma
    • シレトコビクニン[8] Careproctus parvidiscus
    • スルガビクニン Careproctus surugaensis
    • セキチクビクニン Careproctus sinensis
    • ソコビクニン Careproctus bathycoetus
    • タマコンニャクウオ[8] Careproctus rausuensis
    • ダルマコンニャクウオ Careproctus cyclocephalus
    • ツルギコンニャクウオ Careproctus cyanogladius
    • テングコンニャクウオ Careproctus simus
    • トゲビクニン Careproctus acanthodes
    • トビビクニン Careproctus roseofuscus
    • トマトコンニャクウオ Careproctus lycopersicus
    • ネズミコンニャクウオ Careproctus brevipectoralis
    • ノトサイカイビクニン[8] Caraproctus notosaikaiensis
    • ハゴロモコンニャクウオ Careproctus zachirus
    • バラビクニン Careproctus rhodomelas
    • ヒガシコンニャクウオ Careproctus melanurus
    • ヒゲビクニン Careproctus mederi
    • ヒメコンニャクウオ[8] Careproctus rotundifrons
    • ヒレグロコンニャクウオ Careproctus marginatus
    • フジコンニャクウオ Careproctus tomiyamai
    • ユウレイコンニャクウオ Careproctus longidigidus
    • ヨゴレコンニャクウオ Careproctus nigricans
  • Crystallias 属(1種)
    • アバチャン[9] Crystallias matsushimae
  • Crystallichthys(3種)
  • Eknomoliparis 属(1種)
  • フウライクサウオ属 Elassodiscus(4種)
    • ウキクサウオ Elassodiscus obscurus
    • フウライクサウオ Elassodiscus tremebundus
    • モユククサウオ Elassodiscus nyctereutes
  • Eutelichthys 属(1種)
  • Genioliparis 属(3種)
  • Gyrinichthys 属(1種)
  • クサウオ属 Liparis(60種)
    • アマクサウオ Liparis bikunin
    • イサゴビクニン Liparis ochotensis
    • エゾクサウオ Liparis agassizii
    • オーストンクサウオ Liparis owstoni
    • カンテンビクニン Liparis frenatus
    • クサウオ Liparis tanakae
    • コクチクサウオ Liparis miostomus
    • スナビクニン Liparis punctatus
    • ニセソコシロ Liparis burkei
    • ビクニン Liparis tessallatus
    • ボウズクサウオ Liparis latifrons
  • Lipariscus 属(1種)
    • コビトクサウオ L. nasus
  • Lopholiparis 属(1種)
  • Menziesichthys 属(2種)
  • カンテンウオ属 Nectoliparis(1種)
    • カンテンウオ Nectoliparis pelagicus
  • Notoliparis 属(5種)
  • ハリバンクサウオ属 Osteodiscus(4種)
  • Palmoliparis 属(1種)
  • インキウオ属 Paraliparis(147種)
    • アオインキウオ Paraliparis rosaceus
    • アゴインキウオ Paraliparis mandibularis
    • インキウオ Paraliparis atramentatus
    • オナガインキウオ Paraliparis ruficometes
    • スルガインキウオ Paraliparis dipterus
    • トビインキウオ Paraliparis melanobranchus
    • ヒラインキウオ Paraliparis grandis
    • ホムラダマ Paraliparis flammeus
    • ミツバインキウオ Paraliparis variabilidens
    • ムネインキウオ Paraliparis pectoralis
    • モモイロインキウオ Paraliparis entochloris
    • リュウキュウインキウオ Paraliparis meridionalis
  • Polypera 属(1種)
  • Praematoliparis 属(1種)
  • Prognatholiparis 属(1種)
  • Psednos 属(35種)
  • シンカイクサウオ属 Pseudoliparis(3種)
  • Pseudonotoliparis 属(1種)
  • Rhinoliparis 属(2種)
  • Rhodichthys 属(2種)
  • オオバンコンニャクウオ属 Squaloliparis(1種)
    • オオバンコンニャクウオ Squaloliparis dentatus
  • Temnocora 属(1種)
  • Volodichthys 属(5種)

出典・脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 『Fishes of the World Fifth Edition』 p.495
  2. ^ a b c d e f Liparidae”. FishBase. 2024年4月14日閲覧。
  3. ^ 水深8336メートルで深海魚撮影、ギネス記録に認定”. 読売新聞オンライン (2023年4月13日). 2023年4月16日閲覧。
  4. ^ (日本語)『水深8336メートルの深海で泳ぐ魚の撮影に成功、記録更新 東京海洋大など』ロイター公式YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/watch?v=QTNd7uOoqzA2023年4月16日閲覧 
  5. ^ 『Deep-Sea Fishes』 p.70
  6. ^ 『日本の海水魚』 pp.244-245
  7. ^ a b 『深海調査船が観た深海生物』 pp.377-378
  8. ^ a b c d 日本産魚類の追加種リスト”. 日本魚類学会. 2012年4月30日閲覧。
  9. ^ Crystallichthys 属として分類されることもある(『日本の海水魚』 pp.244-245)。

参考文献

外部リンク


クサウオ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 07:45 UTC 版)

カサゴ目」の記事における「クサウオ科」の解説

クサウオ科 Liparidae にはクサウオなど29334種が所属する北極海から南極海まで極めて広範な分布を示すグループであり、生息水深範囲タイドプールから7,000m以深の超深海まで幅広い本科南洋北部太平洋北極海において、もっとも魚種豊富な科の一つとなっている。さまざまな亜科設置提案されているが、Nelson2006)の体系はいずれ情報不足として採用されていない。 体は細長くもたない皮膚粘液状ぬるぬるしていることが多い。背鰭臀鰭棘条をもたず、その基底は非常に長く尾鰭連続することもある。インキウオ属・カンテンウオ属の仲間腹鰭を欠くことが多い。 インキウオ属 Paraliparis オオバンコンニャクウオ属 Squaloliparis カンテンウオ属 Nectoliparis クサウオ属 Liparis コンニャクウオ属 Careproctus スイショウウオ属 Crystallichthys フウライクサウオ属 Elassodiscus 他22

※この「クサウオ科」の解説は、「カサゴ目」の解説の一部です。
「クサウオ科」を含む「カサゴ目」の記事については、「カサゴ目」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「クサウオ科」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「クサウオ科」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「クサウオ科」の関連用語

クサウオ科のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



クサウオ科のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのクサウオ科 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのカサゴ目 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS