オリジナル版消失
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/09 07:53 UTC 版)
終戦後、内田が満州に残留している間に、GHQの検閲を受けない現代劇ということで『限りなき前進』がリバイバル公開されたが、その際、オリジナルのネガに手を加えてラストをハッピーエンドにするという改変が行われた。GHQの方針によるものとも、出演者の意向によるものとも言われているが、改変の経緯は不明である。1954年に帰国した内田は改変の報を聞くと激怒し、再度オリジナルの状態に戻そうとしたがネガもプリントも発見できず、非常手段として改変版で自分の意に沿わない部分を大幅にカットし、そこに本来あったシーンの解説字幕を入れるという未完全版を作成することになった。現存している東京国立近代美術館フィルムセンター収蔵版がこの未完全版であり、現実と妄想の区別がつかなくなった主人公が会社の同僚を招いて宴会をやっている料亭に、娘とその恋人が迎えに来る廊下のカット以降エンディングまでが全てカットされている。内田のトーキー以降の代表作では他に『土』(1939年)が未完全版として現存しているが、こちらは終戦後満州に侵攻したソ連軍が戦利品として持ち去ったプリントが何らかの事情でカットされた後、1960年代に東ドイツで発見されるという経緯があり、『限りなき前進』とは状況が異なっている。『限りなき前進』については、最近でも完全版の探索が細々と続けられている。
※この「オリジナル版消失」の解説は、「限りなき前進」の解説の一部です。
「オリジナル版消失」を含む「限りなき前進」の記事については、「限りなき前進」の概要を参照ください。
- オリジナル版消失のページへのリンク