ウイルス膜融合タンパク質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/11 00:33 UTC 版)
「ウイルスタンパク質」の記事における「ウイルス膜融合タンパク質」の解説
ウイルスエンベロープと細胞膜の融合には、高いエネルギーが必要である。ウイルス膜融合タンパク質は、この高いエネルギーの壁を乗り越えるための触媒として働く。ウイルス糖タンパク質が細胞受容体に結合すると、ウイルス膜融合タンパク質はコンフォメーション(立体配座)の変化を受ける。次に、このコンフォメーション変化は、ウイルスエンベロープ上の融合ループ(FL、fusion loop)や疎水性融合ペプチド(FP、fusion peptide)が細胞膜と相互作用することにより、ウイルスエンベロープの不安定化と細胞膜との融合を促進する。ほとんどのウイルス膜融合タンパク質は、融合後に、FL/FPと膜貫通ドメインがすべてタンパク質の同じ側にある、ヘアピン状の構造になる。 ウイルス糖タンパク質とその融合前後の立体構造により、さまざまな広範囲の構造コンフォメーションが発見されている。ウイルス膜融合タンパク質は、4つの異なるクラスに分類され、それぞれのクラスは特徴的な構造コンフォメーションによって識別されている。 クラスI: 融合後のコンフォメーションは、α-ヘリカルヘアピンの特徴的な三量体で構成される明確な中心コイルドコイル構造を持っている。クラスIウイルス融合タンパク質の例として、HIV糖タンパク質gp41が挙げられる。 クラスII: タンパク質が中心コイルドコイル構造を持たない。特徴的な伸長したβシートの外部ドメイン構造を持ち、それがリフォールディングしてヘアピンの三量体を形成する。クラスIIウイルス融合タンパク質の例として、デングウイルスEタンパク質、ウエストナイルウイルスEタンパク質がある。 クラスIII: 構造コンフォメーションは、クラスIおよびクラスIIのウイルス膜融合タンパク質の特徴を組み合わせたものである。クラスIIIウイルス融合タンパク質の例としては、狂犬病ウイルス糖タンパク質Gがある。 クラスIV: クラスIVウイルス融合タンパク質は、融合関連小型膜貫通型(FAST)タンパク質である。それらはヘアピン三量体やヘアピン構造自体を形成せず、既知のウイルス融合タンパク質の中では最小である。FASTタンパク質は、非エンベロープ型のレオウイルス科ファミリーのウイルスのメンバーによってコードされている。
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