ウイルスの影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/10 07:31 UTC 版)
「MHCクラスI分子」の記事における「ウイルスの影響」の解説
MHCクラスI分子には、ユビキチン化された細胞質タンパク質のプロテアソームによる分解によって形成されたペプチドがロードされる。ウイルスは自身のタンパク質の細胞質での発現を誘導するため、その産物の一部は分解のためのタグ付けがなされ、その結果生じたペプチド断片は小胞体へ移行しMHCクラスI分子に結合する。このように、MHCクラスI分子依存的な抗原提示経路によって、ウイルス感染細胞は感染によって異常なタンパク質が産生されているというシグナルをT細胞へ送る。 ウイルス感染細胞は、隣接する細胞に感染が起こるリスクを低減するため、ほぼ常に細胞性免疫を介したアポトーシスが誘導されることとなる。この免疫監視機構に対する進化的応答として、多くのウイルスはMHCクラスI分子をダウンレギュレーションするか、または細胞表面への提示を防ぐことを可能にしている。細胞傷害性T細胞とは対照的に、NK細胞は細胞表面のMHCクラスI分子の認識によって通常は不活性化されている。そのため、MHCクラスI分子が存在しない場合、NK細胞が活性化され異常細胞として認識される。ヒトのがんのいくつかでもMHCクラスI分子のダウンレギュレーションがみられ、形質転換した細胞では、感染細胞や形質転換細胞を破壊する通常の免疫監視機構を逃れる、同様の生存上の利点が生じている。
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