ウィーン少年合唱団とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ウィーン少年合唱団の意味・解説 

ウィーン少年合唱団

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/05 05:24 UTC 版)

ウィーン少年合唱団
グスタフ・マーラー 交響曲第8番ウィーン楽友協会合唱団ウィーン少年合唱団シュターツカペレ・ベルリンピエール・ブーレーズ in ウィーン楽友協会の大ホール

ウィーン少年合唱団: Wiener Sängerknaben: Vienna Boys' Choir)は、オーストリアの少年合唱団である。

1498年神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世が、宮廷礼拝堂少年聖歌隊として創設した合唱団である。原型はインスブルックヴィルテン少年合唱団で、マクシミリアン1世がウィーンでの新宮廷礼拝堂少年聖歌隊設立の際に、ヴィルテン少年合唱団のメンバーをウィーンに連れてきたものである。

活動

宮廷少年聖歌隊の20人ほどの少年たちの主な任務は、宮廷音楽隊の一員として礼拝堂でのミサ曲の演奏にあった。1918年第一次世界大戦終結とともにオーストリア=ハンガリー二重帝国が瓦解すると、庇護者はいなくなり少年聖歌隊は1度自宅に帰されてしまうが、1921年、経営手腕を買われ宮廷音楽隊の総長に任命されたヨーゼフ・シュニット神父が、伝統ある団体の維持に乗り出した。古い宮廷少年聖歌隊は1924年に「ウィーン少年合唱団」として公式に団体として創設され、今日まで専門的な音楽活動が精力的に展開されている。合唱団は私立の全寮制学校の形をとり、1948年以降は練習場および寄宿舎、学校として、ウィーンのアウガルテン宮殿内が利用されている。

団員数は約100。団員達は、演奏会用に約25人ずつ「モーツァルト」「シューベルト(元宮廷少年聖歌隊員)」「ハイドン(元シュテファン寺院少年聖歌隊員で、たびたび宮廷少年聖歌隊と共演)」「ブルックナー(元歌唱指導者)」という、合唱団やウィーンと所縁のある作曲家の名前が付けられた4つのグループに分けられ、各グループは年に11週間の演奏旅行に出かけ、世界各地で1グループが約80回の公演をこなしている。どれか1つのグループは必ず演奏旅行に出かけているので、3つのグループが学校に残っていて授業を受けている。毎週日曜日に行われる王宮礼拝堂でのミサでは、これら3つのグループのうちの1グループが歌うことになっている。3つのグループが毎週順番に歌うため、1つのグループは3週間ごとに王宮礼拝堂で歌うことになる。

パート(声部)はソプラノアルトのみで、声変わりやギムナジウム卒業の14歳となると退団する。「天使の歌声」のイメージを維持するためである。この厳格さが影響し、競争率は1960年代には16倍だったのが、現在は2~3倍となっている[1]

少年たちは早くから堅実な音楽教育を受け、ほとんどの場合その後の人生に重大な影響を受けている。そのため、彼らの多くが職業音楽家として活躍するようになった。1952年には、男声合唱団コルス・ヴィエネンシスChorus Viennensis)が創設された。そこでは専ら、かつてのウィーン少年合唱団員が活動し、たびたび団とも共演する。しかし現在は音楽関係の仕事に就くのは2割程度だという[1]

日本では、2000年公開の同作品の映画『ドラえもん のび太の太陽王伝説』ではオープニングテーマ『ドラえもんのうた』を歌う。2008年8月から9月にかけて『ピタゴラスイッチ』(NHK)に登場し、いつもここからと『アルゴリズムこうしん』に参加。来日したメンバーのうち指揮者と一部メンバーが実際に行進に参加し、残りがこうしんの歌を歌唱する(練習バージョン「ひとりでこうしん」では、いつもここからがこうしんの歌を歌唱する。)。

題材となった映画

いずれも日本公開のもの。

その他

2010年3月12日、1960年代(上記、志願者最盛期)から1980年代にかけて、当時指導者の立場にあった職員や上級団員による性的虐待(同性愛行為)がされていた疑惑が発覚。団側は即座にホットラインを設け、情報提供を呼びかけている[2]。2010年3月31日現在、11人の元団員からの連絡があったものの、いずれも「当時はあまりにも厳格な教育が行われていた」という内容であり、性的虐待についての報告はされていない[3]

2012年12月、専用の劇場が完成。初日にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏に合わせ、ミサ曲などを披露した[4]

脚注

  1. ^ a b 玉川透 (2010年2月12日). “「天使の歌声」にも時代の波 厳しさ不人気、志望者激減”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). https://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201002120004.html 2016年4月30日閲覧。 
  2. ^ ウィーン共同 (2010年3月13日). “団員に性的虐待疑惑 ウィーン少年合唱団”. 47NEWS (全国新聞ネット). オリジナルの2010年3月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100314225632/http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031301000077.html 2016年4月30日閲覧。 
  3. ^ 「ウィーン少年合唱団」の虐待疑惑、元メンバーが相次いで証言afpbb 2010年3月23日配信
  4. ^ ウィーン共同 (2012年12月10日). “天使の歌声に専用ホール ウィーン少年合唱団”. 47NEWS (全国新聞ネット). オリジナルの2013年10月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131025010232/http://www.47news.jp/CN/201212/CN2012121001001072.html 2016年4月30日閲覧。 

関連文献

  • アレキサンダー・ヴィテシュニック『ウィーン少年合唱団』金子登・金子エリカ 共訳(7版)、東京音楽社、1983年3月(原著1969年)。ISBN 4-88564-001-6  - 7版(初版:1969年)
  • ラインハルト・ティール『天使はうたう ウィーン少年合唱団物語』堀江みどり 訳、東京音楽社、1983年3月。 ISBN 4-88564-023-7  - 原タイトル:Als ob Engel singen
  • 『ようこそ天使たち ウィーン少年合唱団'86年来日記念号.』東京音楽社、1986年4月。  - 『ショパン』別冊。
  • フランツ・エンドラー 著、門屋留樹、門屋厚子 共訳 編『アウガルテン宮殿から ウィーン少年合唱団苦難と栄光の歴史』東京音楽社、1989年3月。  - 付属資料(録音ディスク1枚8cm袋入)
  • パッハー・眞理『アウガルテン宮殿への道 ウィーン少年合唱団とともに』ショパン、2002年4月。 ISBN 4-88364-155-4 
  • ダンスマガジン 編『少年合唱団 天使の歌声』新書館〈エトワールブックス〉、2004年6月。 ISBN 978-4-403-32025-5 

外部リンク



「ウィーン少年合唱団」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ウィーン少年合唱団」の関連用語

ウィーン少年合唱団のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ウィーン少年合唱団のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのウィーン少年合唱団 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS