アリアン5ロケットの故障
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/11 04:23 UTC 版)
「ARTEMIS」の記事における「アリアン5ロケットの故障」の解説
ARTEMISは、2001年7月12日にアリアン5ロケットにより打ち上げられた。H2A試験機1号機で打ち上げる予定もあったが、開発が遅れたためアリアンロケットでの打上げに変更された。 計画では、打ち上げロケットにより遠地点が3万6000kmの静止トランスファ軌道に運ばれた後、衛星本体のエンジンを用いて静止軌道に移動する予定だった。しかし、アリアン5ロケットの3段の故障により予定の高度の半分以下である1万7487kmまでしか到達できなかった。 その後、チームによる懸命な復旧作業が行われた。まず衛星に搭載されていた近地点引き上げ用のアポジエンジンを使用して遠地点高度を31,000kmに引き上げた。そのままでは近地点を上昇させるための燃料が足りなくなるため、軌道調整用に搭載していたイオンエンジン2基を使用して、1日に15kmのペースでゆっくりと予定の軌道に近づいていくという方法が採用された。2002年2月からこのイオンエンジンの噴射を開始し、2003年1月31日に予定の静止軌道に到達した。イオンエンジンの搭載位置の問題から噴射時は姿勢を90度変更する必要があり、搭載されているソフトウェアプログラムの約20%を書き換えるという大作業が行われた。 このトラブルにより使用可能な推進剤が不足し、衛星の寿命は短くなると推測されていた。しかしイオンエンジンを使ったことで推進剤の消費を抑えることができ、2011年7月には当初予定していたミッション寿命の10年間を達成した。 アルテミスは、開発が進められているEuropean Data Relay System (EDRS)の事前実証衛星の役割だけに留まらず、ヨーロッパのデータ中継衛星システムの一部として現在も使われている。
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