積分幾何学とは? わかりやすく解説

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積分幾何学

読み方せきぶんきかがく
【英】:integral geometry

概要

"ビュッフォンの針"のように図形関係した確率幾何確率といい, これらの理論的な部分は, 積分幾何学を基礎にしている. 積分幾何学の基礎概念とは合同変換によって不変な測度(積分)を求めることにあり, 対象が点, 直線, 一般的な図形等でそれらの集合不変な測度それぞれ得られる. その測度(積分)に関係して, 直線についてはクロフトン (Crofton) による, 一般的な図形についてはブラシュケ (Blaschke) による, きれいな主公式が存在する.

詳説

 “ビュッフォンの針”のように図形関係した確率幾何確率といい, これらの理論的な部分は, 積分幾何学(integral geometry)を基礎にしている. 積分幾何学は幾何確率応用可能であるばかりでなく, もっと広く図形に関する様々な局面で基礎となり得る考えられる. そこで積分幾何学の基礎概念直線に関する主公式にかぎって述べることにする. 詳しくは[1], [2]を参照されたい. 積分幾何学の基礎概念とは合同変換によって不変な測度求めることにあるが, 例を直観では分かりづらい直線集合に採り, 以下で議論展開する.


 図1のように, 直線 g\, があって, 原点からこれ下ろした垂線長さp\, , 垂線 x\, 軸との角度\theta\, とすると, この直線



x\cos \theta+y\sin \theta=p
\,      (1)\,


表される. そこで, このp\,\theta \, で, 直線集合(たとえばある領域と交わる直線集合など)の測度



m(X)=\int_{X}f(p,\theta)\; \mbox{d}p \; \mbox{d}\theta 
\,      (2)\,


とおき, 以下, 合同変換不変条件考えよう. 直線 (1)表されるような, 直線集合 X\, が,


Sk-0207-c-e-01-1.png
図1:直線下ろした垂線


合同変換


\begin{array}{lll}
x' &=& x\cos \alpha-\sin \alpha+a \\
y' &=& x\sin \alpha+y \cos \alpha+b
\end{array}\,      (3)\,


によって,



x'\cos\theta'+y'\sin\theta'=p' 
\,


なる直線集合 X' \, 変換されものとする. すると, 上式より


\begin{array}{lll}
\theta &=& \theta'-\alpha, \\
p &=& p'-a\cos \theta'-b\sin \theta' 
\end{array}\,      (4)\,


得られる. ここで, 一様な直線分布考えているので, X\,  X' \, 測度等しく, すなわ ち


\int_{X}f(p,\theta)\; \mbox{d}p \; 
\mbox{d}\theta=\int_{X}f(p',\theta') \; \mbox{d}p' \; 
\mbox{d}\theta'\,


なければならない. ところが, 式 (4)から (p',\theta')\, より (p,\theta)\, への変数変換ヤコビアンは1なので, 上式の右辺変形して



\int_{X}f(p,\theta)\; \mbox{d}p \;
\mbox{d}\theta=\int_{X}f(p',\theta')\; \mbox{d}p \; 
\mbox{d}\theta


と表すことができ, これは  X\, どのようにとっても成立しなければならないので,


f(p,\theta)=c\, ( \, 定数) \,


得られる. そこで  c=1 \, とし,  \mbox{d}p \; \mbox{d} \theta \,  \mbox{d}G\, とおいて, これを直線集合  G \, 密度表わすとすれば, 直線集合測度が式 (2)より


m(X)=\int_X \mbox{d}G\,      (5)\,


導かれる. ここで, 図2のような滑らかな曲線ABがあり, その長さ L \, とする. AB上の点Pでこの曲線と交わる直線g\, , 曲線ABのPにおける接線 g\, とのなす角度 \varphi \, , AからPまでの曲線上の長さ s \, とおく. すると,  (p,\theta) \, から  (s,\varphi) \, への変数変換におけるヤコビアン |\sin\varphi| \, となり, 曲線ABと交わる直線のすべては,  0\leq s\leq L, 0\leq\varphi \leq \pi \, 範囲考えればよい. ゆえに


\int_{0}^{L}\! 
\int_{0}^{\pi}\sin\varphi \; \mbox{d}s \;\mbox{d}\varphi=2L\,


となるので, この  2L \, 曲線  AB \, と交わる直線集合測度 \textstyle \int\mbox{d}p \; \mbox{d}\theta \, としてよいかにみえる. ところが上記積分曲線  AB\, 沿って行なわれたので, この曲線二つ上の点で交わる直線については, それぞれの交点計算されている. したがって, 上記 2L \, という値は求めたい測度よりも大き数値であり,  n(p,\theta) \, でこの重複表現すれば


\int{n}(p,\theta) \; \mbox{d}p \; \mbox{d}\theta=2L\,


得られる. ところで, 曲線ABを滑らかなものとして議論してきたが, 滑らかな曲線有限つなげたものや, 不連続なものについても, ほとんどいたるところ接線存在するので, 上式は成立する. そして対象となる曲線交わらない直線については,  n(p,\theta)=0 \, 解釈し,


\int{n}\mbox{d}G=2L\,      (6)\,


導かれる. さて, これをもとに, 簡単な図形と交わる直線集合測度求めよう. まず上記曲線ABが直線であれば, ほとんどいたるところ  n=1 \, なので, 長さ  L \, 線分と交わる直線集合  X \, 測度


Sk-0207-c-e-01-2.png
図2:曲線直線


m(X)=\int\mbox{d}G=2L\,      (7)\,


となる. 次に曲線が凸閉曲線場合, ほとんどいたるところ  n=2 \, 成立するので, 長さ  L \, の凸閉曲線と交わる直線集合  X \, 測度


Sk-0207-c-e-01-3.png
図3:C\, と交わる確率


m(X)=\int\mbox{d}G=L\,      (8)\,


となる. これを用いると, 以下のような確率簡単に求めることができる. 図3のように凸閉曲線  C_0,C \, があって, 長さそれぞれ,  L_0,L \, とする. 曲線  C_0,C \, に交わる直線集合X_0,X \, とすれば,  C_0 \, に交わる直線が,  C\, にも交わる確率  P \, は, 式(8)より


P=m(X)/m(X_0)=L/L_0\,      (9)\,


となる.


参考文献

[1] L.A.Santaló, Integral Geometry and Geometric Probability, Addison-Wesley, Reading, Massachusetts, 1976.

[2] 腰塚武志, 「積分幾何学について(1)(4)」, 『オペレーションズ・リサーチ』, 21 (1976), 524-529, 591-596, 654-659, 711-717.





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