さらなる定義と性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 17:31 UTC 版)
「局所凸位相ベクトル空間」の記事における「さらなる定義と性質」の解説
半ノルムの族 {pα}α がトータル(total)あるいは分離(separated)であるとは、すべての α に対して pα(x) = 0 が成り立つときは常に x が 0 となることを言う。局所凸空間がハウスドルフであるための必要十分条件は、それが半ノルムの分離族を持つことである。多くの研究者はハウスドルフの条件を定義に含めている。 擬距離は距離の一般化で、d(x, y) = 0 が成り立つのは x = y の場合に限る、という条件を満たさないものである。局所凸空間が、擬距離によってその位相が生じるという意味で擬距離化可能であるための必要十分条件は、それが可算個の半ノルムの族を持つことである。実際、同一の位相を導く擬距離はこのとき d ( x , y ) = ∑ n ∞ 1 2 n p n ( x − y ) 1 + p n ( x − y ) {\displaystyle d(x,y)=\sum _{n}^{\infty }{\frac {1}{2^{n}}}{\frac {p_{n}(x-y)}{1+p_{n}(x-y)}}} で与えられる(ここで 1/2n は任意の正の総和可能な列 an で置き換えることが出来る)。この擬距離は平行移動不変であるが、d(kx, ky) ≠ |k|d(x, y) となるという意味で非同次であり、したがって(擬)ノルムを定義することは無い。擬距離が正当な距離であるための必要十分条件は、半ノルムの族が分離であることである。実際そのような場合は、空間がハウスドルフであるときにのみ成り立つからである。さらに空間が完備であるなら、その空間はフレシェ空間と呼ばれる。 任意の位相ベクトル空間と同様に、局所凸空間もまた一様空間である。したがって一様連続性や一様収束、コーシー列について論じることが出来る。 局所凸空間内のコーシーネット(英語版)とは、すべての ε > 0 およびすべての半ノルム pα に対して、λ, μ > κ ならば pα(xλ − xμ) < ε を満たす κ が存在するようなあるネット {xκ}κ のことを言う。言い換えると、そのようなネットはすべての半ノルムについて同時にコーシー的でなければならない。距離化可能なフレシェ空間とは異なり、一般の空間は非可算の擬距離の族によって定義されることもあり得るため、ここでの完備性の定義は、列を使ったより有名なものの代わりにネットを使って行う。定義により、可算であるような列はそのような空間において収束を特徴付ける上で十分ではない。局所凸空間が完備一様空間であるための必要十分条件は、すべてのコーシーネットが収束することである。 半ノルムの族が関係 pα ≤ pβ の下で前順序となるための必要十分条件は、すべての x に対して pα(x) ≤ Mpβ(x) となるようなある M > 0 が存在することである。その族が結びとして加法を伴う有向集合であるなら、言い換えるとすべての α および β に対して pα + pβ ≤ pγ を満たす γ が存在するなら、その族は半ノルムの有向族(directed family of seminorms)と呼ばれる。すべての半ノルムの族は、同一の位相を定義するという意味で同値な有向族を持つ。実際、与えられた族 {pα}α ∈ I に対して、I の有限部分集合からなる集合を Φ とすると、Φ 内のすべての F に対して q F = ∑ α ∈ F p α . {\displaystyle q_{F}=\sum _{\alpha \in F}p_{\alpha }.} が定義される。{qF}F ∈ Φ は同値な有向族であることが確かめられる。 空間の位相が単一の半ノルムによって導かれるなら、その空間は半ノルム化可能(seminormable)と言われる。有限の半ノルムの族を伴う任意の局所凸空間は半ノルム化可能である。さらに空間がハウスドルフ(族が分離される)なら、その空間は半ノルムの和によって与えられるノルムによってノルム化可能である。開集合に関して、局所凸位相ベクトル空間が半ノルム化可能であるための必要十分条件は、0 が有界な近傍を持つことである。
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