こいぬ座アルファ星とは? わかりやすく解説

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プロキオン

(こいぬ座アルファ星 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/13 14:46 UTC 版)

プロキオン
Procyon
プロキオンの位置
仮符号・別名 こいぬ座α星[1]
星座 こいぬ座
見かけの等級 (mv) 0.37[1]
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  07h 39m 18.11950s[1]
赤緯 (Dec, δ) +05° 13′ 29.9552″[1]
赤方偏移 -0.000011[1]
視線速度 (Rv) -3.2 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: -714.59 ミリ秒/年[1]
赤緯: -1036.80 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 285.0 ± 0.7ミリ秒[2]
(誤差0.2%)
距離 11.44 ± 0.03 光年[注 1]
(3.509 ± 0.009 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 2.6[注 2]
物理的性質
スペクトル分類 F5IV-V+DQZ[1]
色指数 (B-V) +0.421[3]
色指数 (U-B) +0.02[4]
他のカタログでの名称
こいぬ座10番星[1]
BD +05 1739[1], FK5 291[1]
HD 61421[1], HIP 37279[1]
HR 2943[1], SAO 115756[1]
LTT 12053[1]
Template (ノート 解説) ■Project
プロキオンA
仮符号・別名 こいぬ座α星A[5]
位置
元期:J2000.0[5]
赤経 (RA, α)  07h 39m 18.118s[5]
赤緯 (Dec, δ) +05° 13′ 29.97″[5]
固有運動 (μ) 赤経: -716.6 ミリ秒/年[5]
赤緯: -1034.6 ミリ秒/年[5]
物理的性質
半径 2.048 ± 0.025 R[3]
質量 1.478 ± 0.012 M[2]
表面重力 3.96 ± 0.02 cgs[3]
自転周期 23日
スペクトル分類 F5IV-V[3][5]
光度 7.73 L[要出典]
表面温度 6,530 ± 50 K[3]
金属量[Fe/H] -0.05 ± 0.03[3]
年齢 1300〜2710 Myr[3]
Template (ノート 解説) ■Project
プロキオンB
仮符号・別名 こいぬ座α星B[6]
見かけの等級 (mv) 10.92[6]
分類 白色矮星
軌道の種類 プロキオンAの周回軌道
位置
元期:J2000.0[6]
赤経 (RA, α)  07h 39m 19.7s[6]
赤緯 (Dec, δ) +05° 15′ 25″[6]
固有運動 (μ) 赤経: -709 ミリ秒/年[6]
赤緯: -1024 ミリ秒/年[6]
年周視差 (π) 285.9 ミリ秒[6]
絶対等級 (MV) 13.2[注 2]
物理的性質
半径 0.02 R
質量 0.592 ± 0.006 M[2]
スペクトル分類 DQZ[6]
光度 0.00055 L
表面温度 9,700 K
色指数 (B-V) 0.00
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 4.308 ± 0.002 [2]
近点距離 (q) 9 au
遠点距離 (Q) 21 au
離心率 (e) 0.3979 ± 0.0003[2]
公転周期 (P) 40.840 ±0.022 年[2]
軌道傾斜角 (i) 31.41 ± 0.05°[2]
昇交点黄経 (Ω) 284.8°
前回近点通過 1968.08 ± 0.02[2]
他のカタログでの名称
BD +05 1739B[6]
Template (ノート 解説) ■Project

プロキオン[7]Procyon)は、こいぬ座α星こいぬ座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ。おおいぬ座シリウスオリオン座ベテルギウスともに、冬の大三角を形成している。また、冬のダイヤモンドを形成する恒星の1つでもある。

特徴

大きさの比較
太陽 プロキオンA

薄黄色の恒星で、距離は11.46光年太陽系に非常に近い。実視連星だが、伴星が白色矮星であまりにも暗いため小望遠鏡では分離できない。主星と伴星は、太陽系から観測した角距離にして4.31秒角離れた軌道を、離心率0.40の楕円軌道で40.8年かけて公転している[2]

主星のプロキオンAは、同様に白色矮星の伴星を連れているシリウスと比較するとやや低温 (6,650K) で、一回り大きい(プロキオンの半径は太陽の2.048倍、シリウスは1.68倍)。温度の割に明るい(半径の大きい)恒星であり、主系列星から準巨星へ変化しつつあると考えられている。

主星プロキオンAの年齢27億年に対し、伴星のプロキオンBは13.7億年前に白色矮星に変化したと推定されている。その差約13億年が、核融合で輝く恒星としてプロキオンBが過ごした寿命に相当する。このことから白色矮星になる前のプロキオンBはおよそ1.9〜2.1太陽質量の恒星だったと見積もられている[2]。なお現在のプロキオンBの質量は0.59太陽質量だがこれは恒星としての寿命末期に質量の放出が起きるためである。

将来の姿

0.1 〜 1億年以内にはプロキオンは赤色巨星へと進化すると思われる。この段階では、水素の核融合反応により生じたヘリウムが中心核にたまっており、水素の核融合はその周囲で継続しているが、ヘリウムの芯は大きな密度と重力で圧縮されて温度が1億度にも達し、それまで水素の核融合で生じた「灰」であったヘリウムの核融合が始まる為だと思われる。それに従って星の外層は膨張し、大きさは現在の80 - 150倍(半径 0.7 - 1.3 AU)に達する。一方で表面温度は低下するので、赤っぽく見えるようになる。

ヘリウムの核融合は炭素や酸素の原子核を生成するが、プロキオンは質量が小さいため(太陽の1.5倍程度)、それらが核融合を起こす温度には至らず、外層部の水素を大量に放出して惑星状星雲を形成し、残された中心核は白色矮星となって一生を終えると考えられる。

伴星の発見

プロキオンBはあまりにも暗いため、その存在が示唆されてから実際に姿が観測されるまで半世紀以上の歳月を要した[8]。プロキオンの伴星は1844年にフリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセルによってシリウスの伴星と共に提唱された[9]。シリウスと同様に、プロキオンの運動に影響を与える伴星が存在する可能性があるとされた。ベッセルは1840年頃には既にプロキオンに不可視の伴星が存在するというアイデアを持っていたが[8]、論文として正式な形で世に出たのは1844年である。

プロキオンBは当時の技術では視認不可能であり、さらにシリウスと比べて主星の運動に与える影響が小さいため、実在するかどうかすぐにははっきりとしなかった。ベッセルの仮説は1862年のアルトゥル・アウヴェルスによる詳しい研究で確実なものとみなされるようになったが、この時点でもまだ伴星は視認されていない[8]

プロキオンBの姿を捉えたとする最初の確実な報告は1896年で、リック天文台の36インチ望遠鏡を用い観測を行ったジョン・マーチン・シェバーリによるものである[10][8][2]。なおシェバーリ以前にも伴星を発見したという報告があったものの、シェバーリ以降に観測されている伴星と軌道が一致せず、誤りだと考えられている[8]

名称

学名は α Canis Minoris (略称は α CMi) 。固有名のプロキオン[11] (Procyon[12][13]) は、ギリシア語Προκύων をラテン語表記したもので、「犬に先立つもの[注 3]」を意味する[11][12]。これは、“犬” Κύων と呼ばれたシリウスが東の地平線から昇ってくる少し前に、プロキオンが姿を現すことに由来する[11][12]。2016年6月30日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) は、Procyon をこいぬ座α星Aの固有名として承認した[13]

さまざまな文明圏での名称

  • ギリシャでは「プロキュオーン[注 4]」 Προκύων Prokyōn (“犬の前のもの”)と呼ばれた。この名前はホメーロスヘーシオドスには見られず、紀元前4世紀末~3世紀中頃のアラートスによる天文詩『パイノメナ』に現れる[14][注 5]。ただし、プロキュオーンはこの星を指すだけでなく、現在のこいぬ座にあたる星座の名前でもあるので[15]、どちらを指しているのか(あるいは特に区別はしていないのか)、注意する必要がある。
数理天文学の基礎となったプトレマイオスの『アルマゲスト』(紀元後2世紀)の恒星表では、現在のこいぬ座に当たる星座を「プロキュオーン座」[注 6][注 7]と呼び、その第2星(= こいぬ座 α星)について「(犬の体の)後部にある明るい星、《プロキュオーン》と呼ばれるもの」[注 8]と述べている。
  • ローマ(ローマ時代のラテン語世界)では、ギリシャ語の Προκύων をそのままラテン語に取り入れ、「プロキュオーン[注 9]」 Procyōn と呼んだ[注 10]。ラテン語に訳した「ンテ・ネム」Ante Canem [注 11]という表現がキケローによるアラートス『パイノメナ』のラテン語訳に見られ[注 12]、ラテン語辞典でも “Ante Canem” あるいは “Antecanem” として掲載されているが[注 13]、他にも用例があるのかは不明。
ギリシャと同じく、ローマでも「プロキュオーン」は星座も単一の星(プロキオン)も指した。[注 14]
  • アラビアでは「アッ゠アラー[注 15]・アル゠グマイサー」 الشعرى الغميصاء DMG: aš-šiʿrā al-ġumayṣāʾ / ALA-LC: al-shiʿrā al-ghumayṣāʾ(“ただれ目のシアラー”[注 16])、あるいは「アッ゠アラー・アッ゠シャアーミヤ」 الشعرى الشآمية aš-šiʿrā aš-šaʾāmiya / al-shiʿrā al-shaʾāmiya[注 17](“北のシアラー”)と呼ばれている[16]
また、単に「アル゠グマイサー」とも呼ばれる。これと同じ語根の「アル゠ガムサー」الغمصاء al-ġamṣāʾ / 'al-ghamṣāʾ および「アル゠ガムース」الغموص al-ġamūṣ /al-ghamūṣ という呼び名も伝えられている[17][注 18]
「シアラー」は古いアラビアの呼称で、意味は不明である。おおいぬ座のシリウスも「シアラー」と呼ばれるが[注 19]、おそらく、「シリウス」が由来するギリシャ語名「セリオス」Σείριος Seirios(これも意味不明)と語源的な関係がある[18]
『アルマゲスト』のアラビア語訳(9世紀)では、2系統ある翻訳(ハッジャージュ版とイスハーク-サービト版)のいずれにも、これらのアラビア伝統の呼び名が示されている[注 20]。イスハーク-サービト版ではギリシャ語の「プロキュオーン」を音写した「ブルークウーン」 بروقوون burūquwūn があるが、ハッジャージュ版にはない[19]
恒星に関する知識の集大成で、その後に大きな影響を与えたスーフィー[注 21]の『星座の書』[注 22](10世紀)では、「小犬座」[注 23] の恒星表に「(犬の体の)後部にある明るい星、それは《アッ゠シアラー・アッ゠シャアーミヤ・ワル゠グマイサー》である」[注 24]と書かれている。
  • ヨーロッパでは、11世紀頃から、共通学術語であったラテン語による天文関係のいろいろな写本に、アラビア名の「アル゠グマイサー」が、algomeisa, algomeiza, algomeysa, algomeyza などの綴りで出てきている[20]
12世紀につくられた『アルマゲスト』のラテン語訳[注 25]では、ギリシャに由来する prochion の他に、アラビアに由来する ascere ascemie algomeisa が挙げられている[21][注 26]
広く普及した『アルフォンソ表Tabulae alphonsinae は版によって内容が多少異なるが、1492年版および1518年版では、ギリシャ系の名前が Prochion, アラビア系の名前が Aschere Aschemie et Algomeysa[注 27] となっている[22]
コペルニクスの『天球回転論』(1543年)の恒星表では、ギリシャ系の名前がギリシャ文字で προκυνον (プロキュノン)[注 28]と書かれていて、さらに Canicula [注 29]というラテン語の名前が挙げられている[23]。アラビア系の名前は言及されていない。
ケプラーが出版したテュコ・ブラーエの『プロギュムナスマタ』(1602年)の恒星表では、ギリシャ名が Procyon という現代と同じ綴りで現れている[24]。 ここでもアラビア名はない。ケプラー自身の著作『ルードルフ表』(1627年)に収められた拡張版のテュコの恒星表でも同じである[25]
バイアーの『ウラノメトリア』(1603年)では、Procyon の他に、アラビアに由来する名前が Algomeiza, Aschere, Aschemie と分解されて登場し、さらに Kelbelazguar[注 30] という名も出てきていて、これらすべてが、特に区別はされずに、この順に並べられている[26]
18世紀のフラムスティードの「ブリタンニア恒星表」[注 31](1725年)では、Procyon だけで、アラビアに由来する名前はない[27]。この星表はラランドの『天体位置表 第8巻:1785年-1792年』(1783年)にも収録された[28]
19世紀初頭のボーデによる詳細な星図『ウラノグラフィア』(1801年)には、Prokyon と Algomeisa が併記されている[29]。版を重ねた『星空の知識への手引き』の第7版(1801年)でも、両方が挙げられている[30][注 32]。しかし、『ウラノグラフィア』の解説書でもある『天体の一般的な記述と教示、および17240個の星・二重星・星雲・星団の赤経と赤緯の一覧』(1801年)では Procyon のみが挙げられていて、Algomeisa は言及されていない[31]
ボーデと同時代のピアッツィは、『19世紀初頭での主な恒星の平均位置』(「パレルモ星表」、1814年)において、こいぬ座 α 星の名前 Algomeisa から定冠詞 al- を取り去った GOMEISA という名前を、こいぬ座 β 星に与えた[32][33]。この星表には、伝統を無視した、このような恣意的な名付けがたくさんあり、無用の混乱をもたらしたが、それがそのまま無批判に受け継がれて広まり、今日に至っている。



脚注

注釈

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ a b 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ προ- “〜の前” + κύων “犬”
  4. ^ 太字・斜線部分にアクセント。なお、古典(古代)ギリシャ語のアクセントは、近代ヨーロッパ諸語のような強弱アクセントではなく、日本語のような高低アクセントである。
  5. ^ この書はギリシャ語でも後のラテン語訳でもよく読まれ、当時の人たちの天文知識の源泉の1つとなった〔逸見喜一郎 (2000), 148頁; ウォーカー (2008), 67頁〕。
  6. ^ 「プキュノス・アステリスス」 Πρόκυνος ἀστερισμός Procynos asterismos “プロキュオーンの星座”〔Ptolemaeus (1903) , Pars II, p. 146〕。「プロキュノス」は「プロキュオーン」の属格(“~の”)の形。なお、「プロキュノス」のアクセントについて、最後の音節にある(Προκυνός プロキュス)としているものもある〔Liddell & Scott, A Greek-English Lexicon (ed. 1940), Προκύων の項; Eratosthenes (1897), p. 50 など〕。
  7. ^ 『アルマゲスト』の日本語訳〔プトレマイオス (1982)〕、352頁では「小犬座」となっているが、ギリシャ語原文とは異なる。この日本語訳は、ギリシャ語からではなく、フランス語訳からの重訳であるが、そのフランス語訳では “CONSTELLATION DE PROCYON" となっている〔Halma, vol. 2 (1816), p. 75〕。
  8. ^ ὁ κατὰ τῶν ὀπισθίων λαμπρὸς καλούμενος Προκύων 〔Ptolemaeus (1903) , Pars II, p. 146〕.
  9. ^ 古典ラテン語のアクセント規則に従えば「プキュオーン」。なお、y という文字は、本来のラテン語には無く、ギリシャ語の υ (ユー・プシーロン)の音を表すためにこのギリシャ文字(大文字は Υ )を取り入れたもので、発音は [i](「イ」)ではなく [y](「ユ」、ドイツ語の y や ü、フランス語の u の音)である。
  10. ^ 例えば、ホラーティウス Horātius『歌集』Carmina, III.29.18(『ホラティウス全集』〔鈴木一郎 (2001)〕、436頁)や、プリニウス Plinius『博物誌』Nātūrālis historia, XVIII.268(『プリニウス博物誌 植物編』〔大槻真一郎 (2009)〕、452頁)など。なお、これらの日本語訳でのカナ表記「プロキュオン」「プロキオン」は古典ラテン語の発音に沿ったものではないので注意。
  11. ^ ante “~の前” + canis “犬”(canem は対格形、前置詞 ante は対格を要求する)。
  12. ^ キケロー Cicerō 自身のラテン語訳からの引用が『神々の本性について』Dē nātūrā deōrum, II.114にある〔Cicero (1933), p. 95〕。日本語訳は『キケロー選集 11』〔キケロー (2000)〕、166頁。
  13. ^ Oxford Latin DictionaryGlare (2012)〕では “Ante Canem”、 『改訂版 羅和辞典』〔水谷智洋 (2009)〕では “Antecanem” として項目が立てられている(Georges や Gaffiot の 辞典でも “Antecanem”)。一方、この辞典の旧版(『増訂新版 羅和辞典』〔田中秀央 (1966)〕)や Lewis and Short, Latin-English Dictionary, 1879 では “Antecanis” としているが、この形は(他の著作の)後代の注釈に見られるもので、この時代に存在していたのではない〔Cicero (1883), vol. 2, p. 236〕。
  14. ^ Oxford Latin DictionaryGlare (2012)〕の Procyon の項には “The star Procyon, or the constellation Canis Minor, which contains it.” とある。
  15. ^ カナ表記は「シウラー」とも。
  16. ^ “涙目の”、“濁り目の”などとも。レインの An Arabic-English Lexicon の記述によれば、「グマイサー」は、目に白い膿が出る状態をいうようである〔Lane (1863-1893), غمص の項〕。古い呼称で、名付けの本当の由来はわからない〔Kunitzsch (1959), p. 118 注3〕。
  17. ^ 「シャアーミヤ」شآمية šaʾāmiya は「シャーミーヤ」 شأميّة šaʾmiyya(現代アラビア語では شاميّة šāmiyya)という別形がある〔Wright (1933), vol. I, p. 154, Rem. e〕。付加記号を付けない شامية という表記では、これらが区別できない。星名研究の権威であるクーニチュは一貫して šaʾāmiya を採用しているので、それに従う。
  18. ^ グマイサーはガムサーの縮小形。クーニチュは、「アル゠ガムサー」は本来の名前ではなく、詩人が韻律の都合で「アル゠グマイサー」を「アル゠ガムサー」に置き換えたものだとしている〔Kunitzsch (1961), p. 20〕。
  19. ^ プロキオンが「北のシアラー」と呼ばれるのに対して、シリウスは「南のシアラー」(「アッ゠シアラー・アル゠ヤマーニヤ」الشعرى اليمانية aš-šiʿrā al-yamāmiya / al-shiʿrā ~)と呼ばれる。両者を合わせて、双数形で「アッ゠シアラヤーン」الشعريان aš-šiʿrayān / al-shiʿrayān(“2つのシアラー”)と呼ぶ。
  20. ^ ハッジャージュ版では「アッ゠シアラー・アル゠グマイサー・アッ゠シャアーミヤ」 الشعرى الغميصاء الشآمية (写本によっては後ろの2つが逆順になっている)、イスハーク-サービト版では「アッ゠シアラー・アッ゠シャアーミヤ・ワル゠グマイサー」 الشعرى الشآمية والغميصاء 〔Kunitzsch (1971), pp. 324-325; Kunitzsch (1986), pp. 210-211〕。「ワル゠」 wa-l- / wa 'l- は接続詞「ワ」 wa (“~と”、英語の“and”)と定冠詞「アル゠」 al- が合体したもの。
  21. ^ ブドゥッ゠ラハマーン・アッ゠スーフィー عبد الرحمن الصوفي ʿAbd ar-Raḥmān aṣ-Ṣūfī / ʿAbd al-Raḥmān al-Ṣūfī.(「アブドゥッ゠ラハマーン」の表記は揺れていて、「アブドゥッラハマーン」「アブド・アッ=ラハマーン」などとも。「ラハマーン」は「ラフマーン」とも。)
  22. ^ 「キターブ・ワル・アル゠カワーキブ・アッ゠サービタ」كتاب صور الكواكب الثابتة Kitāb ṣuwar al-kawākib aṯ-ṯābita / ~ al-thābita “恒星の図像の書”。
  23. ^ ウカバ・アル゠ルブ・アル゠スガル」 كوكبة الكلب الأصغر kawkabat al-kalb al-aṣġar / al-aṣghar “小さい方の犬の星座”(「カウカバ」“星座”、「カルブ」“犬”、「アスガル」“より小さい、小さい方の”)〔 aṣ-Ṣūfī (1954), p. 293〕。なお、ここでの kawkabat という表記は、後ろに続けて読むときには語尾の -a-at と発音される(ウカバトゥルルビルスガル kawkabat-u l-kalb-i l-aṣġar)ためで、通常は kawkaba (あるいは kawkabah)と書く。
  24. ^ النيّر الذي في المؤخّر وهو الشعرى الشآمية والغميصاء 〔Ṣūfī (1954), p. 294〕.
  25. ^ ヨーロッパで12世紀に起こった大翻訳活動で、クレモーナのゲラルドゥス Geraldus Cremonensis によって、アラビア語版から翻訳された。
  26. ^ 1515年にヴェネツィアで出版された版では asehere ascemie algameisa となっている〔Ptolemaeus (1515), fol. 87a〕。
  27. ^ 「エト」et はアラビア語の「ワ」wa に対応するラテン語の接続詞(“~と”、英語の “and”)。
  28. ^ 自筆原稿では προκυον(プロキュオン)となっている。
  29. ^ 「カニークラ」canīcula(“小犬”)。canis(ニス、“犬”)の縮小形。本来はプロキオンではなくシリウスを指す(『改訂版 羅和辞典』〔水谷智洋 (2009)〕、“canīcula” の項)。
  30. ^ Kelbelazguar は「アル゠カルブ・アル゠アスガル」 الكلب الأصغر al-kalb al-aṣġar / al-aṣghar (“小さい方の犬”=小犬座)に由来する。(「カルブ・アル゠アスガル」كلب الأصغر kalb al-aṣġar / al-aṣghar ではないので注意。)
  31. ^ Stellarum inerrantium catalogus Britannicus. これはフラムスティード『ブリタンニア天文誌』〔Flamsteed (1725)〕の第3巻に収められている。この巻には、フラムスティード自身によるこの恒星表の他に、プトレマイオス、テュコ・ブラーエ、ヘヴェリウスの恒星表も掲載されている。
  32. ^ こちらでは Procyon, Algomeiza という綴りになっている。ボーデは、『星空の知識への手引き』での表記(Procyon, Algomeiza)は通常の表記で、『ウラノグラフィア』での表記(Prokyon, Algomeisa)はより正しい表記だと説明している〔Bode (1801a), p. 88〕。

出典

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  20. ^ Kunitzsch (1959), pp. 73-74, 160-161; Kunitzsch (1966), p. 119(索引).
  21. ^ Kunitzsch (1974), p. 325.
  22. ^ Tabule astronomice Alfonsi Regis (1492), ページ番号なし。Tabule astronomice Divi Alfonsi Regis Romanorum et Castelle (1518), fol. 55b.
  23. ^ Copernicus (1543), fol. 59b; コペルニクス (2017), p. 141(ページ番号表記欠落)。
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  31. ^ Bode (1801c), p. 12(星座解説); p. 47a(恒星表)。
  32. ^ Kunitzsch (1959), pp. 160-161 (Nr. 93).
  33. ^ Piazzi (1819), p. 51 (No. 106).

参考文献

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  • アラトス/ニカンドロス/オッピアノス 著、伊藤照夫 訳『ギリシア教訓叙事詩集』京都大学学術出版会、2007年。 
  • 逸見喜一郎『ギリシャ・ローマ文学 ― 韻文の系譜 ―』放送大学教育振興会(放送大学教材)、2000年。 
  • ウィトルーウィウス 著、森田慶一 訳『ウィトルーウィウス建築書』東海大学出版会、1969年。 
  • ウォーカー, クリストファー 編、山本啓二・川和田晶子 訳『望遠鏡以前の天文学 ― 古代からケプラーまで ―』恒星社厚生閣、2008年。 
  • キケロー 著、山下太郎・五之治昌比呂 訳『キケロー選集 11 (哲学IV)』岩波書店、2000年。 
  • コペルニクス 著、高橋憲一 訳『完訳 天球回転論』みすず書房、2017年。 
  • プトレマイオス 著、藪内清 訳『アルマゲスト』(新版〔初版1949, 58年〕)恒星社厚生閣、1982年。 
  • プリニウス 著、岸本良彦 他 訳、大槻真一郎 編『プリニウス博物誌 植物編』(新装版〔初版 1994年〕)八坂書房、2009年。 
  • ホラティウス 著、鈴木一郎 訳『ホラティウス全集』玉川大学出版部、2001年。 
  • 田中秀央 編『増訂新版 羅和辞典 羅和辞典』研究社、1966年。 
  • 水谷智洋 編『改訂版 羅和辞典』研究社、2009年。 


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