がんにおいて高頻度でみられるATMのエピジェネティックな欠陥
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 05:51 UTC 版)
「ATM (タンパク質)」の記事における「がんにおいて高頻度でみられるATMのエピジェネティックな欠陥」の解説
ATMは、さまざまながんにおいて高頻度でプロモーター領域の高メチル化が見られるDNA修復遺伝子の1つである。ATM遺伝子のプロモーターのメチル化はATMのmRNAやタンパク質の発現の減少を引き起こす。 脳腫瘍の73%以上でATM遺伝子のプロモーターがメチル化されており、ATMのプロモーターのメチル化とタンパク質発現には強い逆相関が存在する(p < 0.001)。 ATM遺伝子のプロモーターは小さな非触知乳がんの53%で高メチル化が観察されており、ステージII以降の乳がんでは78%で高メチル化がみられ、ATMのmRNA存在量の低下とATM遺伝子プロモーターのメチル化の異常には極めて有意な相関(P = 0.0006)が存在している。 非小細胞性肺がん(NSCLC)では、腫瘍とその周囲の組織学的に腫瘍と関係していない肺組織におけるATMのプロモーターのメチル化は、それぞれ69%と59%であることが示された。しかし、より進行したNSCLCではATMのプロモーターのメチル化の頻度は22%へと低下した。周囲の肺組織におけるATMプロモーターのメチル化は、ATMの欠乏がNSCLCへの進行を導く初期の発がん素地である可能性を示唆している。 頭頸部の扁平上皮がんでは、腫瘍の42%でATMのプロモーターのメチル化がみられた。 DNA損傷はがんの主要な根本原因であり、多くのがんの根底にはDNA修復の欠陥がある可能性が高いと考えられている。DNA修復が不十分な場合、DNA損傷が蓄積する傾向がある。DNA複製時、こうした過剰なDNA損傷はエラー率の高い損傷乗り越え合成(translesion synthesis)による変異を増加させる可能性がある。また、過剰なDNA損傷はDNA修復時のエラーによってエピジェネティックな変化を増加させる可能性がある。こうした変異やエピジェネティックな変化はがんの発生へとつながる可能性がある。多くのがんで頻繁にみられるATMのエピジェネティックな欠乏は、こうしたがんの進行に寄与している可能性が高い。
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