あらすじB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 05:32 UTC 版)
「クラウチ・エンドの怪」の記事における「あらすじB」の解説
10時15分、派出所に女が駆け込んでくる。夜勤のヴェター巡査とファーナム巡査は、彼女ドリスの奇妙な証言を聞き取る。 ヴェターは「タウンじゃないのかね」と尋ねるが、ドリスは「いいえ、Towenとeが付いていたんです」と回答する。ファーナムはレイモンド巡査部長に「クラウチ・レーンやノリス・ロードなんて知ってるか?」と問うも、レイモンドは知らないと即答し、「タウェンといえば、旧いドルイド教の言葉で、生贄を捧げる儀式を行う場所だ」「だからもしタウェンを知っていたら、おれなら近づかないようにするぜ」と続ける。若いファーナムはいかれ女の妄想と結論付けるが、ヴェターは長年の勤務経験から、ここクラウチ・エンドでは妙な事件が頻発し、「奥のファイル」(未処理の事件簿)にはドリスの話に似た事件が幾つも記録されているのだと説明する。 「おれたちのいる世界ってのは、普段はちゃんとした、まともな世界だと思ってるが、じつは空気のいっぱい詰まった大きな皮のボールみたいなものじゃないだろうか、とな。ところが何箇所かは、その皮がすり減ってほとんど破れそうなくらいになっている。そこがつまり……防壁の薄い場所ってことだ」「で、つまりクラウチ・エンドは、そういう防壁の薄い場所のひとつじゃないかと思うわけだ。ハイゲイトならまず大丈夫。マスウェル・ヒルやハイゲイトなら、異次元と、この世界のあいだにじゅうぶん安心できるくらいの厚みがあるからな」「もし“皮の薄い地点”というようなものがあるとしたら、そのひとつがアーチウェイやウィンズベリー・パークあたりから始まっているんだろうと……だが本当に薄くなっているのは、このクラウチ・エンドだ」 午前2時半過ぎ、看護婦が呼ばれ、ドリスをホテルまで送り届ける。ヴェターは外の空気を吸うために外に出る。残されたファーナムは、ヴェターを探して街角まで歩いていく。5分後、反対側からヴェターが帰って来たとき、ファーナムの姿はなかった。あと1分早ければ、佇むファーナムの姿がふっと消えてしまうのを目撃したはずである。 ドリスはアメリカに帰国した後に自殺を図り、サナトリウムに入る。ファーナム巡査の妻シーラは、陰謀を疑いロンドン警察庁に問い合わせを続けたが、夫の行方は杳として知れず、やがて離婚を成立させて別の男性と結婚する。ヴェターは事件の4ヶ月後に早期退職を果たすが、6ヶ月後に心臓麻痺で死ぬ。 さて実は、ロニー・フリーマンとロバート・ファーナムは同じ場所にいた。「奥のファイル」の中で、ファーナムとフリーマンの2枚の報告書は、アルファベット配列の偶然から隣り合っている。閑静なロンドン郊外のクラウチ・エンドでは、不思議な事件が跡を絶たない。
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