『ポリフィロの愛の戦いの夢』
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「眠れるヴィーナスとキューピッド、サテュロス」の記事における「『ポリフィロの愛の戦いの夢』」の解説
本作品の源泉としては1499年出版のフランチェスコ・コロンナ(英語版)の小説『ポリフィロの愛の戦いの夢』の第7章との関連が指摘されている。『ポリフィロの愛の戦いの夢』は古代のものとされる遺物が多数描写されているが(エクフラシス)、第7章では泉のニンフの彫刻について詳しく描写されている。この第7章に添えられた挿絵では、木陰に身を横たえて眠るニンフと、その足元で欲情したサテュロスが木の枝に結ばれた布を持ち上げてニンフの裸体を眺める様子が描かれている。ニンフの彫刻に関するいくつかの記述はそれがヴィーナスであることを暗示しており、なおかつ古代ギリシアの彫刻家プラクシテレスのヴィーナスの彫刻と関連付けている。 ヴェネチアの画家ジョルジョーネはコレッジョよりも早く、この場面をもとに『眠れるヴィーナス』(Venere dormiente, 1510年頃)を描いたと考えられている。ジョルジョーネはサテュロスを描いていないが、眠るヴィーナスの姿が『ポリフィロの愛の戦いの夢』の挿絵と酷似している。またティツィアーノはジョルジョーネの影響を受けて『ウルビーノのヴィーナス』(Venere di Urbino, 1538年)を描いている。コレッジョが本作品を描いた時期は2人の中間に位置し、サテュロスを描いている点でジョルジョーネよりも直接的に『ポリフィロの愛の戦いの夢』に依拠している半面、同書の挿絵やジョルジョーネが描いたヴィーナスの図像によらず、短縮法を用いて縦長の画面を斜めに横切る形でヴィーナスを横たえさせ、さらに記述にないクピドを描いているところに本作品の特徴がある。また縦長の画面に横たわる独特の構図のため、ヴィーナスは鑑賞者に対して正面を向き、絵画に描かれたサテュロスがヴィーナスを見下ろすように、鑑賞者もヴィーナスを眺めることになる。このように絵画の中のサテュロスと鑑賞者とを重ねる構図によって同時代のヴィーナスの絵画とは異なる官能性を確立している。
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