『イワン・オソキン』(1905年執筆、1915年発行、ロシア語版)にあらわれた初期の思想
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「ピョートル・ウスペンスキー」の記事における「『イワン・オソキン』(1905年執筆、1915年発行、ロシア語版)にあらわれた初期の思想」の解説
P・D・ウスペンスキーの思想の出発点を探るには、死後に出版された英語版とはとくに結末の部分が大きく異なる『イワン・オソキンの不可思議なる人生』のロシア語版の内容を知ることが重要である。そこにはP・D・ウスペンスキーに独自なものと、のちに出会うグルジエフの思想を先取りしたと見えるものの両方を認めることができる。 特筆すべき点として、『イワン・オソキン』では、P・D・ウスペンスキー本人の人生と思想の間に、のちに生じたような大きな乖離がない。どのような性格をもって生まれてゆえに、どのような状況で、どのようなことを思うに至ったかが、手に取るようにわかる。『ターシャム・オルガヌム』以降、P・D・ウスペンスキーはこの明快さを失った。 『イワン・オソキン』のストーリーは、同一の時間枠のなかでまた振り出しに戻って人生をやり直すというパラレルワールド的な発想に基づいている。この物語においては興味深い発想であったが、のちに、P・D・ウスペンスキーはこれを教義化し、生徒に教えるようになった。人は死んだ後、ふたたび生まれた年に戻って人生をやり直すという、容易に納得し難い「永劫回帰」の思想は、P・D・ウスペンスキーが死を前にしてこれを否定する発言をした後も、P・D・ウスペンスキーに由来する「システム」の教えの一部としてモーリス・ニコルらによって継承された。 この永遠のくりかえしというテーマに対するP・D・ウスペンスキーの扱い方のニュアンスは、ときとして、人の魂は死なないという思いに結び付いたロマンチックなものとなるが、それは同時に、機械的な反復、人生の無意味性、すべてはただ起こるのみ、自分というものに対する無力といった思いと結び付く。のちに書き改められた『イワン・オソキン』には、機械的な反復のなかで人は生きる機会を浪費する、時間と機会は無限ではないのだという、永劫回帰を部分的に否定し、永遠のくりかえしということのネガティブな側面を強調する視点が追加されている。
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